ロシアにおいて、ある個人事業者が「DOGGYMAN」という文字を含む商標(登録番号:第926023号、下図参照)について、第3類、第5類、第21類、第35類の商品・サービスを指定して登録した。これに対し、日本のドギーマン社は、当該商標が自社の商号を複製したものであると主張し、特許紛争審判室(Chamber Of Patent Disputes)に商標権の取消を請求した。

ドギーマン社は1970年に設立されているが、ドギーマン社は、問題の商標は日本のドギーマン社を想起させるものだとして(下図参照)、問題の商標が出願された時点において、ロシア市場ではすでに日本のドギーマン社が認知されていたため、問題の商標の使用は消費者の混同を招くおそれがあると主張した。

問題となっている商標の優先日前より相当以前の2014年には、ドギーマン社との間で、同社のロゴを付した商品を販売することを内容とする供給契約が締結されていた。ドギーマン社は、優先日前に遡る税関提出書類、ラベルの写真、ならびに会社名が表示されたその他の証拠書類を提出した。
これらの商品は、ロシア最大級のオンラインマーケットプレイス「Wildberries(ワイルドベリーズ)」でも販売されている。「doggyman」と検索すると、事実上すべての情報源においてドギーマン社の製品説明が表示される。Premium Pet Ltd.は、「DOGGYMAN」ブランドの商品をロシアに輸入し、さらに卸売業者および小売業者に流通させている。
ドギーマン社は日本国内において複数の商標を保有しており、またロシアにおいても商標登録を予定している。具体的には、「CATTYMAN」(下図参照)については国際登録がすでに存在し、「DOGGYMAN」についても国際登録出願(出願番号:1715053)が係属中である。

当該個人事業者が販売するすべての商品は、ドギーマン社の正規商品の外観を模倣している。実際には、動物用品の模倣品市場が一つのセグメントとして存在しており、これに加えて、Premium Pet Ltd.によって正規に輸入された商品も流通しており、その結果、消費者は個人事業者とドギーマン社との間に何らかの関係があると認識している。
問題の商標には「Doggy」という文字が含まれており、動物向け商品との関連性を想起させるものであるため、消費者を誤認混同させ、法令に違反すると主張された。したがって、「DOGGYMAN」を付した人間向け商品についても、同様に消費者を混同させているとされた。
ドギーマン社は、販売業者に対して警告書を送付し、当該商標の使用中止を求め始めた。また、問題の商標について、登録されているすべての商品・サービスを対象として、特許紛争院に登録の取消しを申し立てた。
当初、特許紛争院は問題の商標の取消を拒絶した。ドギーマン社はこの決定を不服として知的財産裁判所に控訴(事件番号:СИП-772/2024)し、知的財産裁判所は本件を審理したのち、特許紛争院に対して判断を見直すよう命じた。これを受けて、特許紛争院は改めて本件を再審理した。
再審理においても、ドギーマン社は前述の主張を改めて行った。これに対し、個人事業者は、ドギーマン社は日本国内でのみ事業活動を行っており、ロシアにおいてはPremium Pet Ltd.が商品を販売しているにすぎないと反論し、さらに、ドギーマン社はロシアにおいて自己の会社名の下で事業を行っておらず、また、登録商標が付された商品の大半は、税関申告書に照らすと、ロシアに輸入されている商品と類似しないとも主張した。
個人事業者は、Premium Pet Ltd.が輸入した商品は、自身の商標との間で何らの連想も生じさせないと述べた。また、日本企業の良好な信用や評価に関する情報は、単なる宣言的主張にすぎず、裏付けとなる証拠を欠いているとした。ドギーマン社との間に連想関係は存在しない、というのが個人事業者の立場であった。
これに対し、ドギーマン社は、ロシア国外で製造した商品をPremium Pet Ltd.を通じて販売していることを示す書類を提出した。インターネット上には、「DOGGYMAN」が付された商品に関する情報が多数存在しており、その多くは、問題の商標登録よりも相当以前の日付のものであった。また、ロシア国内における商品の流通を示すため、税関申告書も提出された。
両当事者の主張を聴取した後、特許紛争院は関連する法令の規定とそれらに関する両当事者の主張との関係について詳細な検討を行った。
その結果、「DOGGYMAN」という標章が長期間かつ広範に使用されており、問題の商標との間に高度の類似性が存在することを踏まえると、消費者は個人事業者が販売する商品が、ドギーマン社の商品と同じ出所に由来するものであると誤認するおそれがあると判断された。したがって、問題の商標は、ロシア民法典第1483条第1項に適合しないものと結論付けられた。
本文は こちら (DoggyMan Co. safeguards brand in Russian pet market)
