はじめに
商標の使用は、商標法体系における核心的な概念であり、商標権の取得、維持及び権利侵害判断に直接関わるもので、企業のブランド戦略において極めて重要な意義を有している。近年の商標法改正の動向を見ると、商標の使用を重視する傾向が一層強まっていることが明らかである。例えば、2019年改正の『商標法』第4条には、「商標の登録出願は使用に基づかなければならず、使用を目的としない悪意による商標登録出願は拒絶される。」と明確に規定されている。また、『商標法(改訂草案)』(意見募集稿)には、「商標の使用許諾義務」や「商標使用状況の説明」といった制度が新設され、商標の使用義務が一段と強化されている。このように、商標の使用が商標法の実務においてますます重要な役割を果たすようになっていることが分かる。本稿は、現行の法律規定及び関連事例を踏ま商標法の実務に有益な参考を提供するものである。
1.商標の使用とは
商標の使用が商標の権利付与・権利確定及び侵害抗弁において果たす具体的な役割について考察し、商標の使用の役割を検討する前に、まず「商標の使用」とは何を意味するのかを明確にしておく必要がある。『商標法』第48条は、「商標の使用」について、「商品、商品包装又は容器及び商品取引文書、又は宣伝広告、展覧及びその他の商業活動において商標を使用し、商品の出所を識別する行為のことを言う。」と定義している。この定義から明らかなように、商標の核心的な機能は、商品又は役務の提供者を識別することである。例えば、ある商標の使用行為が、商標と商品又は役務の提供者との間に関連性を形成できない場合、その行為は、法的意味における商標の使用とは認められない。さらに、商標の使用は、商標権を維持するために象徴的に行われることではなく、真実かつ善意の商業目的に基づくものでなければならず、その使用行為には連続性と安定性が求められる。使用の形態としては、商標を商品やその包装や容器に直接付すほか、契約書や請求書などの取引文書における表示、広告宣伝、メディア活動及び展示会などのマーケティングやプロモーションの場面における使用も含まれる。
また、第35類役務における商標の使用行為は、特に強調しなければならない。第35類には、広告、マーケティング、商業管理など、企業の経営と密接に関連する役務が含まれている。しかしながら、広告や販売促進などの活動において商標を使用することが、第35類における商標の使用に直ちに該当するわけではないことは、多くの商標出願人に誤解されている。実際に、企業が自社商品を販売するか、又は自社商品を販売するために広告宣伝を行うか、又は事業活動の展開や自社の経営管理を強化するために日常的な企業管理や商業分析などを行う場合に商標を使用したとしても、これらの行為は、第35類役務における商標の使用行為には該当しない。第35類役務の特徴、「権利者自身の業務上の需要のために行われる行為ではなく、他人のために供される役務」である点にある。たとえば、企業が自社商品のプロモーション過程で、自社商品の商標を広告宣伝に用いた場合、当該商標によって形成された「商品提供者」との対応関係は、「広告役務の提供者」との対応関係ではない。したがって、このような使用行為は、広告役務(第35類)における商標の使用行為には該当しない。
2.商標の使用が商標の権利付与・権利確定において果たす役割
商標の権利付与・権利確定段階において、「商標の使用」は商標専用権を取得するための重要な基礎になっている。固有の識別力を欠く標章であっても、使用によって「後天的な」識別力を獲得しさえすれば、登録要件を満たすことができる。一方、すでに登録された商標は、継続的な使用によってその知名度が高まることで、より広範な保護範囲が認められることがある。また、未登録商標であっても、実際に使用されていれば、一定の条件下で『商標法』に基づく保護を受けることができる。このように、商標の使用は、商標の権利付与・権利確定の体系において極めて重要な役割を果たしている。続いて、『商標法』第11条、第13条、第15条及び第32条と結びつけて、商標の使用が商標の権利付与・権利確定において果たす役割について、詳しく分析する。(続く...)
(北京魏啓学法律事務所 中国弁護士 商標弁理士 王 艶)
