2026-01-20

EU:商標の「外観」が「名称」以上に決定的要因となった事例 - Knijff Trademark Attorneys

イタリア発祥の世界的な菓子メーカー、フェレロ(Ferrero)グループの商標「NUTELLA(ヌテラ)」は、世界的に著名であるにとどまらず、その瓶の形状、配色および全体としての特徴的な商品表示もまた、多くの消費者にとって即座に認識可能なものであろう。

このような視覚的アイデンティティが、欧州連合知的財産庁(EUIPO)における最近の商標異議申立事件の中核を成した。同事件においてフェレロは、「MASTELLA」商標の出願登録に対して異議を申し立てた。

本件において注目すべき点は、文字要素である「Nutella」と「Mastella」との間には、外観上および称呼上、ほとんど類似性が認められないことである。両商標の接点は、別のところに存在していた。

すなわち、両商標はいずれも、赤色および黒色から成る類似した二色の活字構成、類似する書体を採用しており、さらに、チョコレートスプレッドを塗ったパン、ヘーゼルナッツと牛乳の入ったグラスといった、ほぼ同じ図形要素を用いている。その結果、名称が異なるにもかかわらず、「MASTELLA」は視覚的には「NUTELLA」に極めて近い印象を与えるものとなっていた。 

このためフェレロは、混同のおそれに加えて、欧州連合商標規則(EUTMR)第8条第5項に基づく「著名商標の保護」を異議理由とした点において、適切な戦略を採ったといえる。
同規定の下では、類似性の判断基準はより低く設定されており、問題となるのは混同の有無ではなく、消費者が著名商標との間に観念的な連想(mental link)を形成するかどうかである。

EUIPO異議部は、NUTELLAがイタリアにおいて極めて強い著名性を享有していること、ならびに、まさにこれらの識別力の高いパッケージ要素により、外観的な類似性が当該連想関係を成立させるに足りるものであると認定した。

そこから、不正の利益の成立に至る判断は比較的容易であった。「MASTELLA」は、「NUTELLA」の外観およびイメージに極めて近接した位置付けを採ることにより、著名な「NUTELLA」商標の有する吸引力およびイメージに便乗し、自らは相応の投資を行うことなく、マーケティング上の利益を享受し得る立場にあると評価されたのである。

本件から導かれる実務上の教訓は明白である。ブランドコンセプトの構築にあたり、名称が異なるとしても、著名ブランドの視覚的世界観に大きく依拠する場合には、極めて危うい領域に足を踏み入れることになる。特に、高い名声を有する商標に関しては、図形や外観的な類似性のみであっても、決定的な要因となり得ることに留意する必要がある。

本文は こちら (NUTELLA vs MASTELLA: when a brand’s look speaks louder than its name)