2026-01-07

EU:指定商品「時計」、年号のみからなる商標の登録を拒絶 - Novagraaf

 年号のみからなる商標は、時計の分野で商標として登録するに足る識別力を有するのだろうか。2025年9月、欧州連合一般裁判所は、時計メーカーであるモントル・チューダーSA(Montres Tudor SA、以下「モントル・チューダー」)が「1926」を商標として登録出願したが、登録を拒絶する判断を下した。Laura Vincentが解説する。

商標登録において、識別力は中核的な要件
 商品の種類,品質,数量,用途,価格,原産地,生産時期,サービスの提供時期又は商品又はサービスのその他の特徴を示すために取引上使用することができる記号又は表示のみによって構成されている商標の登録は拒絶される(EU商標に関する2017年6月14日の欧州議会及び理事会の規則(EU)2017/1001の第7条(1)(c))。

4桁の年号は識別力ある商標として機能し得るか
 4桁の数字によって年を示す場合、その意味は多義的であり得る。すなわち、製品の製造年、企業の創業年、ヴィンテージ、あるいは記念の年などである。
これらは、マーケティングの観点からは魅力的に映るかもしれないが、少なくとも時計や宝飾品の世界において、商標として保護することは極めて困難(場合によっては不可能)であろう。本件商標「1926」の登録をめぐる最近の判決はその典型例である。

商標の識別力に関する判断の経緯
 2023年7月6日、モントル・チューダーは、商標「1926」について、以下の第14類の商品を指定してEUに国際登録出願した。
「時計、すなわち時計、腕時計、時計の部品及び附属品(他の類に属するものを除く。)、置時計・掛時計及びその他の時計、クロノメーター、クロノグラフ(時計)、時計ベルト、時計の文字板、時計および宝飾品用のケース、時計用ムーブメント及びその部品、身の回り品(宝飾品を含む。)、宝石及びその模造品(貴石及び半貴石)、貴金属及びその合金、ピン(宝飾品)、カフスボタン」

 2024年2月9日、欧州連合知的財産庁(EUIPO)は、この商標出願に関して、識別力の無さを理由に一部登録を拒絶した。
すなわち、商標「1926」は、指定商品に関する特性(具体的には、商品の生産時期または生産開始時期)を示すものとして記述的であると判断された。

 モントル・チューダーはこの決定を不服として、2024年6月25日審判請求したが、審判部は当該部分拒絶を維持した。その判断の要旨は以下のとおりである。
* 商標「1926」は、商品がデザインされた年、あるいは製造会社が設立された年を指すものとして即座に解釈される。加えて、その解釈は、商標を付した商品の伝統や永続性を称える純粋な宣伝的メッセージを構成するものである
* 「1926」という年は、企業の格式を示すものとして機能する
* 出願人のウェブサイトにおいて、1926年は商標「The Tudor(チューダー)」が誕生した年として引用されており、商品の起源を特定するものである

 以上から、国際商標「1926」は、指定商品について商業的な出所表示ではなく、識別力を欠くと結論づけられた。
モントル・チューダーは、この審決を不服としてEU一般裁判所に上訴した。

一般裁判所における争いと出願人の主張
 出願人は、「1926」は時計や宝飾品分野において特定の意味内容を有しておらず、文脈に応じて複数の解釈が可能であると主張した。「1926」商標は暗示的(evocative)であり、識別的または象徴的な要素として認識され得るというのである。
また、「1926」という数字は特定の数値であり、1920年代一般へ拡張されるものではなく、モントル・チューダーの時計はアール・デコ様式を採用していないとも主張した。
さらに、ワインやその他の農産物とは異なり、時計や宝飾品においては、生産年が品質や希少性を示す指標ではないとし、加えて、高級品分野においては、4桁の年号は、ブランドの品格としての概念とより密接に結びつき、伝統や歴史的意義を想起させるものにすぎないと強調した。 

裁判所の判断
 2025年9月10日の判決において、一般裁判所はEUIPO審判部の判断を支持した。
裁判所は、企業が現実的かつ一般的な年号(ヴィンテージ)を用いる場合、通常は、創業年への言及、あるいは広告目的で、当該商標を付した商品の伝統性や耐久性、さらには商品の構想年を示そうとする意図があるとした。
また、時計や宝飾品分野においては、企業の伝統は、経験、知識および能力の保証を意味するとも指摘した。その上で、本件商標は1926年を指すものであり、当該商品の設計年を示すものとして解釈され得るとした。
さらに、それが古い年号であることから、商品の耐久性、品質、ならびにそれを製造する企業の伝統および威信を想起させる可能性があるとした。
したがって、商標「1926」は単なる暗示的表現にとどまらず、関連需要者によって、即座に、かつ特段の思考過程を経ることなく、指定商品の特性を記述するものとして認識され得る。その結果、商標「1926」は、出願人の商品を他社の商品と識別する機能を果たし得ないと判断された。

 裁判所は、特に、「1926」という年号自体が特別に品質イメージを伝達していることを立証する必要はなく、また、当該年が時計や宝飾品分野において特段の意味を有するか否かを検討する必要もないと述べた。

 また、商標「1926」の持ち得る意味のうち、少なくとも一つが記述性の拒絶理由に該当すれば、識別力が無いと結論づけるには十分であるとも判示した。 
さらに、過去に年号を含む商標がEUIPOに登録されているとの出願人の主張については、「出願人は、他人に有利に行われた違法行為を自己の利益として援用し、同一の状況を得ようとしている」として、裁判所はこれを一蹴した。

飾品商標における日付選択の難しさ
 年号はマーケティング上の資産となり得る一方で、少なくとも時計や宝飾品分野においては、そのような商標の独占的権利を取得することは困難であり、場合によっては不可能となる。
本判決は、商標における架空の日付の誤認惹起性が問題となっており、現在、欧州連合司法裁判所に付託された先決裁定(preliminary question)の手続きが進められているフォーレ・ル・パージュ(Fauré Le Page)事件と、一定程度呼応するものといえる。

本文は こちら (Dates and trademarks: EU rejects ‘1926’ for watches)