2026-02-02

中国商標法改正草案:「ポイント解説及び簡評」- Linda Liu Group

 2025年12月22日に開催された第14期全国人民代表大会常務委員会第19回会議において、『中華人民共和国商標法(改正草案)』(以下、「改正草案」という)の初審議が行われた。12月25日、分科会審議が行われた。本改正草案は、12月27日付で中国人大網に公表され、社会一般からの意見募集を開始している。意見募集期間は45日間である。

 今回の改正は『商標法』の第五次改正であり、2019年の第四次改正と比較すると、今回は全体を見渡した包括的な改正である。現行『商標法』の8章73条に対し、今回の改正草案は9章84条へと拡充されており、特に「第ニ章 商標登録の要件」が新設された。改正草案の主な変更内容は以下のとおりである。

 

上述の改正内容から、今回の商標法改正草案には以下の特徴が見られる。

 第一に、改正草案は商標の登録要件を明確化し、商標登録手続きを規範化するとともに、商標の権利付与・権利確定のメカニズムを最適化した。具体的には、現行商標法において各章に分散して権利付与・権利確定に関する条項を統合し、新設の「第二章 商標登録の要件」に集約することで、法体系をより明確かつ合理的なものとした。手続の最適化については、商標異議申立期間を従来の3か月から2か月に短縮し、権利付与の迅速化が図られている。
同時に、異議申立及び審判案件の審理中止メカニズムを規範化し、裁判所が行政訴訟の審理において、被訴決定又は裁定が下された時点の事実状態を基準とすべきことを明確にした。さらに、改正草案は「隔離期間」の適用範囲を縮小し、登録商標の退出体制を完備すること共に、無効宣告、取消、または存続期間が満了しても更新されなかった商標が、その後の出願に及ぼす影響が排除されている。

 第二に、商標の管理及び商標専用権保護が一層強化された。今回の改正草案は、近年の商標分野におけるホット事例を踏まえて、「権利濫用の禁止」という基本原則を新設し、商標の正当使用の状況を明確化した。また、改正草案は、「公衆を誤認させる方法で登録商標を使用する」行為に対する罰則を規定し、さらに「悪意による訴訟」行為が他人に損害を与えた場合には、行為者が民事責任を負う結果を明らかにした。加えて、改正草案は、商標管理部門に対し、情状が重大な違法行為に対して登録商標を自主的に取り消す職権を付与し、登録商標に対する管理機能をさらに強化した。

 第三に、改正草案は、馳名商標への保護を強化した。非同一又は非類似の商品について既に登録された馳名商標の先取り出願禁止を、他人の馳名商標の登録の有無を問わず一律禁止する範囲に拡大した。これにより、未登録の馳名商標に対しても、区分を超えた保護を受けるようになった。

 第四に、時代の変化に対応する改正が行われた。例えば、「動き商標」が登録商標の保護対象として新たに組み入れられた。

 第五に、改正草案は、代理機構及び従事者の二重責任を強化し、商標代理機構及び従事者に対する監督管理及び処罰を強化させるとともに、商標代理業界組織の性質と職能を明確化した。これにより、商標代理業界の規範化及び健全な発展を促進するための法的根拠を提供している。

 第六に、改正草案は、『民法典』、『特許法』、『不正競争防止法』、『刑法』などの他の法律との整合性を強化した。例えば、「悪意」を「故意」に統一するなど用語表現を調整するとともに、現行商標法において他の法律規定と重複している内容を削除した。例えば、他人の登録商標や未登録の馳名商標を企業商号として使用する行為を不正競争行為を構成する規定や、商標権侵害行為が刑事犯罪を構成する規定などを削除した。関連行為は、それぞれ『不正競争防止法』の第7条第2項、『刑法』第213条、第214条、第215条により規制されることとなった。

 今回の改正草案の内容を総合的に見ると、この前、国家知識産権局が2023年の意見募集稿において提起され、広く公衆の注目を集めていたいくつかの条項——例えば、「重複登録の禁止」、「出願段階で使用説明または使用承諾の追加」、「登録後5年毎の使用状況報告義務の新設」、及び「悪意により先取り出願された商標の強制移転制度」などは、いずれも今回の改正草案には盛り込まれていない。この点から見れば、今回の改正はより穏健な歩みを取っていると言える。一方、改正草案の一部内容については、再検討の余地があると考えられる。例えば、「裁判所が行政訴訟の審理において、被訴決定・裁定がなされた時点の事実状態を基準とすべきである」ことは、実質的に裁判所が審理において事情変化を考慮する余地を制限することになる可能性がある。また、「悪意」という表現を「正常な生産経営の需要を明らかに超えて商標登録を出願する」という表現に調整したことは、現行の防衛的な登録出願の合法性に対して一定の影響を与えるおそれがある。「悪意による商標登録出願行為」に対する処罰規定についても、すべての「登録禁止・使用禁止」条項の違反や他人の先行権益と抵触するすべての状況に適用されることから、処罰の適用範囲が広すぎる懸念もある。さらに、商標代理機構(罰金の上限20万元)及び代理人(罰金の上限10万元)に設定された処罰の上限は、他の新たなに追加された処罰対象(例えば、誤認を生じさせる使用行為、団体商標又は証明商標の登録者の管理怠慢)などの上限よりも高い。これらの具体的な規定の妥当性については、なお議論の余地がある。

 それにもかかわらず、筆者は、今回の改正草案は全体として中国の商標法制度に対する全面的かつ着実な最適化・アップグレードしたものと評価している。草案は、商標登録、管理及び保護といった核心的なプロセスに対して合理的な調整を行っていただけではなく、商標分野で生じた新たな状況や課題にも前向きに対応している。新条項の追加や既存規定の改正などを通じて、法律が時代の発展ニーズに適したものとなるよう整備されている。

 中国の立法慣例に従えば、法律の改正は通常、全国人民代表大会常務委員会による3回の審議手続きを経る必要がある。今回の商標法改正草案についても、今後の審議過程において、立法機関が社会各界の意見や提案を幅広く聴取し、知恵を集めて、より完成度の高い法改正が実現されることが期待される。十分な審議と絶えずの最適化を経て、新たな改正『商標法』が一日も早く公布・施行され、中国経済の高品質な発展により強固な法的基盤をもたらすことを信じている。

中国弁護士 郜 宇
中国商標弁理士 肖 暉
中国弁護士 宗 可麗