待望の「中華人民共和国商標法」改正草案(以下「本草案」という。)全文が公表された。これは、中国商標法の第5回改正作業における重要な段階を画するものである。
本草案の内容は、昨年末に公開情報に基づいて行われていた分析と概ね一致している。その中核的目的は、商標の囲い込みや悪意の出願をその源流において抑制すること、真正な商標使用義務を強化すること、中国において未登録の著名標章にも及ぶ形で著名商標の区分を超えた保護を拡張すること、並びに商標行政機関の権限を強化すること(不正に使用されている登録商標を職権により取消す権限を明示的に付与することなど)にある。
特に注目されるのは、異議申立期間を現行の3か月から2か月へと短縮する案である。これは、様々な立場から議論を呼んでいる。賛成派は、悪意の異議申立ての余地を抑制し、迅速な商標登録を必要とする業界に資するものであると評価する。他方で、慎重派は、手続の効率化を図るとしても、権利者が証拠を収集し法的書面を準備するために合理的に必要な時間的権利を過度に圧縮すべきではなく、とりわけ複雑な事案においては2か月という期間は実務上の困難を生じ得ると指摘している。
本草案公表後、とりわけ権利者および法律実務家の間で大きな関心を集めているのが、ある手続規定の改正である。本草案は、商標の権利確定および有効性に関する行政事件を裁判所が審理する場合、争われている行政決定がなされた時点に存在した事実状態を基準として判断すべきことを明記している。この規定は、審理の基準時を事実上固定することにより、その後の変更に起因する手続の往復を減少させ、手続の安定性および効率性を高めることを目的とするものである。
しかしながら、この規定は、権利者が権利を取得・保護するために従来用いてきた戦略に重大な影響を及ぼすものであり、実質的には手続き上の権利を制限するものだ。
1. 「事情変更の原則」の適用制限
行政決定がなされた後、訴訟が終結するまでの間に基礎的な権利状態が有利に変更された場合(登録を妨げていた引用先行商標が無効となった場合など)であっても、新規則の下では、当該新事実に基づいて原決定を覆すことは困難となる可能性がある。
これは結果の不確実性を高め、権利の取得または行使確保までの期間を長期化させるおそれがあり、コストの増大にもつながり得る。
2. 訴訟段階における「証拠補強」余地の縮減
新規則の下では、商標の使用、需要者間での認知度、先行権利の存在、または主観的意図等を立証するために訴訟段階で提出される新証拠について、その証明力は厳格に制限される可能性があり、場合によっては裁判所により考慮されないこともあり得る。
これは、立証戦略の重点が決定的に行政審査段階へ移行することを意味する。すなわち、権利者は、異議申立ておよびその後の再審査、拒絶査定不服審判、無効審判といった行政手続の段階において、可能な限り完全かつ説得的な証拠の連鎖を提出しなければならない。
その結果、知的財産権および証拠資料を体系的・標準化された方法で、かつ将来を見据えて効率的に管理することについて、権利者に対し従来よりもはるかに高い水準の対応が求められることとなる。
さらに、本草案は、商標権者が自発的に抹消登録を行った商標についても、抹消公告日から1年以内は、後願を拒絶するための引用商標として援用し得ることを規定している。この規定もまた議論を呼んでいる。すなわち、権利者が明示的に放棄した商標は通常実際には使用されておらず、市場における混同のリスクもないのが一般であるから、そのような商標について過度に長い登録禁止期間を設けることは、商標資源のより効率的な活用を促進する観点から適切ではないとの見解もある。
本草案のパブリックコメント期間は2026年2月9日に終了したが、前述した手続規定の立法趣旨および具体的運用基準は、関係者からの意見提出における重要な論点となっている。
立法手続に従えば、本草案は今後修正および更なる審議を経た上で、全国人民代表大会常務委員会による採決に付される予定である。順調に進展した場合、改正商標法は2026年前半に正式施行される見込みである。
本文は こちら (China is revising its Trade Mark Law: Procedural rights are being tightened)
