英国最高裁判所は、Oatly社の英国商標「POST MILK GENERATION」の無効審決に対する上告審について判決を言い渡した。Oatly社の商標は、英国乳業業界の業界団体であるDairy UK Limited(以下、「Dairy UK」)による申立てを受け、無効とされていた。
Dairy UKは、1994年商標法第3条第4項に依拠したもので、同規則は、英国においてその使用が連合王国において商標に関する法令以外の制定法若しくは法規則により禁止されている場合は,その禁止の範囲において,登録されない旨を定めている。Dairy UKが根拠としたのは、特定の「表示、名称(designation)」の使用を規制するEU由来の規則であり、この規則は、「milk」という表示は、同規則上の定義に該当する製品以外には使用してはならないと規定している。つまり、同規則上の定義は、当該製品が動物由来であることを要件としているのだ。
本件の上告審における争点は、「表示、名称」の意味内容であった。Oatly社は、この語は食品または飲料の「製品名」という狭義に解すべきであり、食品または飲料に関連して用いられる用語一般という広義に解すべきではないと主張した。これに対し、最高裁は広義の解釈を採用した。その結果、非乳製品との関係で「POST MILK GENERATION」という標章中に「milk」という語を用いることは、当該規則により禁止されると判断した。
さらにOatly社は、仮に当該用語の使用が原則として禁止されるとしても、「POST MILK GENERATION」における使用は例外規定に該当すると主張した。すなわち、当該語はオーツ飲料製品の特性を記述するために明確に用いられているのであり、例外の適用を受けるべきであるというのである。しかし、裁判所は当該使用が「明確」であるとは認めず、この主張も退けた。
本判決の帰結として、英国においては、上記規則上の定義に該当する乳製品以外の商品について、「milk」という語を使用し、または商標中に組み込むことはできないことが確認された。なお、この最高裁判決は、商標法の基礎をなす消費者保護の原理に基づくものではなく、「公正な競争条件を定める(set out fair conditions of competition)」という政策的観点、すなわち「milk」という語の使用を厳格に保護するため明確に禁止するという立法趣旨に基づくものである。
本件は、急速に拡大する代替乳製品市場に対抗しようとする乳業業界にとっての勝利といえる。
乳業分野または代替乳飲料分野で事業活動を行っている場合、本判決は、商標の出願または使用を検討する際に十分考慮する必要がある。製品が規則上の乳製品に該当しない場合、自社製品との関係で「milk」という語を使用することはできない。他方、乳業分野に属する事業者にとっては、本判決は、代替乳飲料分野で「milk」を含む商標出願に対する異議申立てや、「milk」を含む商標の使用差止めを主張するための新たな法的手段となる。
もっとも、本件は法の適用が実際の消費者市場の実情から乖離しているように見える事例の一つといえるかもしれない。消費者は日常的に「oat milk(オーツミルク)」「soy milk(豆乳)」「almond milk(アーモンドミルク)」といった表現を用いているが、これら製品の製造業者は、顧客とのコミュニケーションのためにこれらの用語を使用することが制限されることになる。オーツ“milk”入りの紅茶を一杯楽しみながら、考えてみるべき論点である。
本文は こちら (Don’t mention “milk” (unless you are a dairy product)!)
