EUIPO(欧州連合知的財産庁)およびフランス産業財産庁(INPI)における商標取消および無効に関する決定には、敗訴当事者に対し、勝訴当事者が手続において支出した費用を負担すべき旨の規定が含まれることがある。敗訴当事者が当該決定に従わない場合に、勝訴当事者が取り得る対応についてPauline Pilaudeauが解説する。
当事者系手続(inter partes proceedings)において、ある当事者が敗訴当事者と認定された場合、当該手続において勝訴当事者が立替払いした費用を負担しなければならない。
手続の具体的内容は、関与する官庁によって異なる。例えば、EUIPOにおいては、異議申立手続、無効審判、取消審判等の手続について、費用に関する決定が下される。これに対して、フランスの知的財産庁INPIでは、当事者の申立てに基づき、商標の無効・取消手続きにおける費用の負担について判断する(フランス知的財産法典L.716-1-1条)が、異議申立手続では費用の裁定を行わない。
費用に関する決定がなされた場合、勝訴当事者は、当該決定に基づき、敗訴当事者に対して費用を支払うよう請求する権利を有する。実務上は、勝訴当事者が敗訴当事者に対し、直接又は代理人を通じて支払を求めるのが通常である。これに対し、敗訴当事者は任意に支払うこともあれば、支払を拒否することもある。
敗訴当事者が支払を拒否した場合、勝訴当事者は、請求を断念する(実務上はこのケースが多い)か、又は決定の執行に着手するかを選択することになる。ただし、決定の執行を求めるために、それ自体に費用が発生し、場合によっては決定により認容された金額を上回ることもある点には留意すべきである。
費用決定を執行するための要件
単に有利な決定を得ただけでは、直ちに強制執行を行うことはできない。以下の要件を満たす必要がある。
* 当該決定において、費用額を確定する裁定が含まれていること
* 当該決定が確定していること。すなわち、不服申立てがなされていないことを証明する書面(不服申立不在証明書(certificate of no appeal))などにより、上訴が提起されていないことが確認されていること
* 当該決定が執行可能であること
費用決定の執行方法
執行手続は決定を下した官庁により異なる。
* INPIの決定である場合、不服申立不在証明書を取得した後、INPIに対して執行命令の発付を申請する
* EUIPOの決定である場合、執行手続はEUIPOの管轄外であり、決定の執行が求められる領域の国内当局、通常は敗訴当事者の住所地国の当局を通じて開始しなければならない
費用決定を執行するための要件が満たされた後は、執行が行われる国の手続法に従って進められる。
例えば、フランスにおいて費用決定を執行する場合、フランス民事訴訟法第653条以下に基づき、執行官(bailiff)により敗訴当事者に送達がなされなければならない。
これらの規定に従い、敗訴当事者が自然人である場合には本人に直接送達がなされる。法人である場合には、その法定代表者、授権代理人又は適法に権限を付与された者に対して送達が行われる。
執行官は、送達書類の内容、支払うべき金額および履行期限を、当該権限ある者に通知する。
所定の期限内に履行されない場合、執行官は、原決定書に基づき、敗訴当事者の口座から判決で特定された金額を直接差し押さえることができる。
支払われるべき金額には、遅延損害金および執行官費用を含む遅延関連費用が加算され、これらも敗訴当事者の負担となる。
費用決定の執行を選択するか否か
執行手続は複雑であり、時間を要する場合もあるが、判決において認容された費用の償還を実現する手段である。また、相手方当事者との紛争関係において、特に償還額が高額である場合には、執行手続自体が有効な圧力手段として機能し得るだろう。
本文は こちら (Trademark revocation: How to enforce INPI and EUIPO cost decisions)
