2026-03-17

インドネシア:商標審査を迅速化 - Tilleke & Gibbins

インドネシアの商標出願手続は、2026年2月23日に施行された法務省令第5号(MOLR 5/2026、以降「MOLR」)により大幅に合理化された。異議申立てが行われない単純な案件では、出願人は出願から3か月以内に登録される可能性があり、従来の実務と比較して大きな改善となっている。

MOLRはまた、名称および住所の変更手続ならびに係属中の出願に関する権利の移転手続について詳細な規定を導入した。さらに、地方の個人および中小企業を支援する法務省地方事務所の役割を強化し、不可抗力に関する規定を新設するとともに、団体商標に関する新たな要件を導入し、すでに実務上行われていた複数の運用を正式に制度化している。 

実体審査の迅速化
 MOLRにおける最も重要な変更は、実体審査に関する規定である。
MOLRは、出願から15日以内に出願を公告しなければならないことを明示的に定め、その後2か月間の公告期間が設けられた。異議申立てはこの期間内にのみ請求することが可能であり、期間経過後の請求は、たとえシステム上で手数料の支払いが受理されても処理されない。
 新規則はさらに、商標庁(TMO)に対し、異議申立てを受理した日から14日以内にその写しを出願人へ送付することを義務付けている。
異議申立請求がない場合には、公告期間終了直後に実体審査が開始され、30日以内に完了する。一方、異議申立てが請求された場合には、応答書の提出日から90日以内に審査を終了することとされた。
 これらの期間設定により、異議のない出願については公告終了から最終判断まで概ね1か月程度で進行することが可能となる。
職権審査で暫定的拒絶理由通知が出された場合、出願人は通知日から30営業日以内に応答書を提出する必要がある。ただし、本規則は応答提出後の再審査の期間については明示していない。最近の実務では、TMOはおおむね2〜3か月以内に再審査を完了している。
出願段階における権利者変更は実体審査を停止させ得る。

出願段階における変更について詳細な仕組みを導入した。これには以下が含まれる;
* 出願人名の変更
* 出願人住所の変更
* 出願の譲渡
* 係属中出願を含む合併・買収

 以前の商標法ではこれらの変更を形式上可能としていたものの、明確な手続や期限が存在しなかったため不確実性が生じていた。MOLRでは手続の明確化を図る一方で、審査スケジュールに一定の時間を追加する効果も生じている。
 出願人名称や住所の変更、あるいは権利移転の申請が行われると、15日間の審査期間が追加される。
提出書類が不完全である場合、TMOは変更審査終了後30日以内に補正通知を発行しなければならない。出願人は2か月以内にこれに応答し、その後TMOが再審査を行う。

変更手続が完全に解決するまで、商標出願の実体審査は開始されない。
したがって、このような変更手続は商標審査のタイムラインを停止させることになる。迅速化制度の恩恵を受けたい出願人は、係属中に変更手続を開始することを避けるべきである。可能であれば、
* 新規出願前に変更や組織再編を完了する
* あるいは登録後に変更する
といった対応が望ましい。
本規則はまた、譲渡のための提出書類要件についても明確化している。

不可抗力規定
MOLR 5/2026は、不可抗力を以下のように定義している。
* 戦争
* 革命
* 暴動
* 労働争議
* 自然災害
* その他これに類する緊急事態

 これらにより出願人が手続上の要件を履行できない場合が対象となる。この定義は、2024年7月30日の憲法裁判所判決第144号(No. 144/PUU XXI/2023)と整合する。
不可抗力による救済は、実体的義務を免除するものではなく、履行期限を停止する効果のみを持つ。また緊急事態が終了した場合には、出願人は速やかに未提出書類を提出しなければならない。
また本規則は、不可抗力によって手続遵守が妨げられた場合に追加期間を求める仕組みを設けている。出願人または代理人は、法務大臣またはTMOに対して期限延長を申請することができる。対象となる手続には以下が含まれる。
* 出願
* 優先権主張の補完
* 係属中出願に関する名称・住所変更の記録
* 係属中出願商標の譲渡
* 更新
* 登録後の権利者情報変更
* 登録商標の権利移転
この仕組みにより、必要書類の欠落に関する期限を、緊急事態が収束し出願人が要件を満たせるようになるまで停止することが可能となる。

団体商標に関する変更
 MOLRは、団体商標の資格要件を厳格化し手続要件を拡張した。
団体商標出願は、以下のような団体主体によってのみ行うことができる。
* 団体(groups)
* 協会(associations)
* 協同組合(cooperatives)
* その他の認められた団体
また政府も、中小零細企業の発展支援または公共サービスのために団体商標を出願することができる。
これは、誰が出願できるかを明示的に制限していなかった従来制度とは異なる。新規則は、団体商標を真の団体主体が保有すべき資産として再定義している。
 団体商標を第三者にライセンスすることの禁止は従来どおり維持されている。しかし、MOLRは実務上重要な経路を明確化している。すなわち、非構成員が団体商標を使用したい場合、その団体コミュニティに加入することにより使用が可能となる。
なお、企業が保有している既存の団体商標については未解決の問題が残っている。新規則は、知的財産総局がこれらをどのように新制度と整合させるのかを明示していない。
 このような立場にある権利者にとっては、通常商標への移行を検討し、必要に応じてライセンス契約を組み合わせることが、商業的実態に適合する可能性がある。

その他の重要な変更
 MOLRは、法務省地方事務所の役割を最適化し、地域支援申請窓口として機能させる制度を導入した。地方事務所は以下の役割を担う;
* サービスカウンターで電子化されていない書類を受理し
* 知的財産総局のオンラインシステムに入力する
地方事務所が支援できる業務には、申請、登記、更新、および抄本の取得が含まれ、これらの事項に関する支援は、地域の個人および中小零細企業に限定される。

新しい出願チェックリストでは、出願人の身分証明として認められる複数の身分証明書を明示している。国内外の出願人に対して認められるものとして、以下が含まれる。
* 身分証明書
* 一時滞在許可証(KITAS)
* 在留許可(KITAP)
* 子供向け身分証明書(KIA)
また、法人が商標出願を行う場合には、定款の認証写しの添付が義務化された。

KIAの採用は異例である。KIAは18歳未満の子どもに発行される身分証であり、通常、単独で拘束力ある法律行為を行う能力を有しない。しかし商標登録は、第三者に対して排他的かつ行使可能な財産権を創設するものである。これは、単に身分を証明する行政文書であるパスポート等とは本質的に異なる。
この制度設計は、未成年者名義の商標登録に基づく権利行使またはその有効性が争われる紛争を生じさせる可能性があり、手続的・倫理的問題を引き起こすおそれがある。その結果、規則の目的である迅速性、制度的整合性、法的確実性の向上と矛盾する可能性がある。

結論
 MOLRは、迅速化された審査期間と体系化された手続的保障を組み合わせた形で、インドネシアの商標制度を大きく再調整するものである。
迅速化されたタイムラインは、急速に拡大するインドネシアの投資環境と整合する前向きな発展であり、行政の効率性と対応力に対する強いコミットメントを示している。
もっとも同時に、審査の速度が、十分かつ信頼性の高い審査を支えるものであり続けることを確保することが重要であり、それにより審査の質が継続的に維持されることになる。

本文は こちら (Indonesia Speeds Up Trademark Examination)