2019年ミャンマー商標法は、商標登録、権利行使および保護のための近代的な制度として導入された。しかしながら、知的財産局(IPD)のソフトオープニング期間中に極めて多数の出願が提出されたことから、2022年以降に出願された商標は、依然として審査待ちの状態にある。IPDは2021年に提出された出願の審査を進めており、2024年5月1日以降、これらの出願を毎月公報で公告している。このような状況の中、企業は自社ブランドを保護し、抵触する可能性のある商標を監視し、円滑な登録手続を確保するため、積極的な戦略を採用することが望ましい。
審査待ち商標を保護するための実務的措置
出願中の商標は完全な商標権を付与されてはいないが、ブランド所有者は自らの地位を強化するために、以下のような実務的措置を講じることが可能だ。
● IPD公報のモニタリング
企業はIPDの月次公報を定期的に確認し、同一または混同を生じさせるおそれのある商標を早期に特定すべきである。これにより、「利害関係人」が商標出願に対して異議を申し立てることを認める商標法の規定に基づき、異議申立てを適時に行う準備を整えることができる。
● 市場活動の監視
潜在的な侵害行為を早期に発見することは、警告書(cease-and-desist letter)の送付や異議申立手続といった迅速な対応を可能にする。企業は、競合会社、販売代理店、流通業者および小売業者による自社商標の無断使用を監視する必要がある。
● 使用証拠の収集
商標の使用に関する証拠を維持・蓄積することは、識別力に関する主張を補強し、権利行使の裏付けを確保することになる。企業は、商業活動、流通、ブランドのプロモーションおよびブランド開発、マーケティング・コミュニケーション、製品包装および表示、ならびにミャンマーおよび国際市場(特に東南アジア市場)におけるブランド認知を示す販売実績等に関する記録を保管しておくべきである。2019年商標法は先願主義を採用しているものの、使用証拠は識別力の主張や権利行使の場面において実務上相当な補強資料となり得る。
● 暫定的な権利行使手段の活用
出願中の商標であっても、絶対的拒絶理由または相対的拒絶理由に基づき、他の商標出願に対する異議申立てまたは拒絶の根拠として援用することが可能である。さらに、一定の信用・名声を確立している標章については、パッシングオフの法理または関連法令における不正競争規定に基づき保護を受けることができる場合がある。したがって、正式な登録前であっても、不正使用を抑止するための暫定的な救済措置を利用することが可能だ。
● 優先権主張の検討
該当する場合には、ブランド所有者はWTOルートによる優先権主張を検討し、より早い出願日を確保するとともに、後願によって既存の権利主張が損なわれることを防ぐべきである。
● IPD審査への事前準備
ブランド所有者は、記述的標章、識別力の欠如、他の商標との類似といった絶対的または相対的拒絶理由に基づく審査官からの指摘を予測し、これに対する裏付け資料を事前に準備しておくべきである。このような事前対応により、審査手続を円滑に進めることができ、手続の遅延リスクを低減することができる。
まとめ
ミャンマーの商標制度は現在も発展途上にあるが、出願段階にあるからといってブランド所有者が無防備な状態に置かれるわけではない。出願中の段階は受動的な状態ではないが、モニタリング、証拠収集および暫定的な権利行使を通じて積極的に保護することが可能である。さらに、優先権主張や審査への事前準備を行うことで、保護を一層強化し、手続遅延を最小限に抑えることができる。
ミャンマーにおける商標保護は、登録証の発行よりもはるか以前から始まる。出願中の商標も、戦略的に管理されることで重要な資産となり得る。とりわけ、モニタリング、証拠準備、権利行使の選択肢などを含む現地事情に即した助言を踏まえることにより、出願手続の全期間を通じてブランドの保護を確保することが可能となる。
本文は こちら (Preregistration Strategies for Safeguarding Trademarks in Myanmar)
