2026-03-18

米国:ナイキのブランド復活が招いた商標権紛争 - Novagraaf

ナイキが伝説的なサッカーライン「Total 90」を復活させようとした試みが、米国において紛争を引き起こしている。スポーツ用品大手のナイキは、2019年に「Total 90」商標の登録を失効させていたが、その名称が別のブランドによって取得されていることを認識していなかった。その結果、「Total 90」の再発売は法的措置によって阻止される可能性に直面した。本件についてAnnette Lindemanが解説する。

レトロなヴィンテージブランドは現在きわめて高い人気を得ており、世界的なスポーツシューズ・アパレル企業であるナイキが、2026年ワールドカップを控えた時期に、ノスタルジックなブランドである「Total 90」を再導入するという判断は、十分に合理的であるといえる。しかしながら、ナイキはその前提となる商標権の状況を十分に調査していなかった。

商標登録を失効させることの危険性
 ナイキが2019年に「Total 90」商標の登録を失効させた際、エンジニアでありユースサッカーのコーチでもあるHugh Bartlettはこれを好機と捉え、2022年に「TOTAL90」を商標登録した。Bartlettの会社であるTotal90 LLCはサッカー関連のアプリを開発するとともに、アパレルやシューズの販売を開始した。

交渉決裂により訴訟へ
 2024年、Total90 LLCはナイキに対し、潜在的なコラボレーションの可能性について提案を行ったが、交渉が決裂すると、Total90 LLCは商標権侵害を理由としてナイキを提訴した。Total90 LLCは、ナイキが「TOTAL90」商標を侵害していると主張し、当該商標の使用および当該商標を付した製品の販売を差し止める仮差止命令を求めた。 

 第一ラウンドでは、ナイキが「Total 90」というブランド名の使用を中止する必要はないと判断され勝利した。裁判所は、回復不能な損害の差し迫った危険性や、訴訟において勝訴する具体的可能性を示す証拠が不十分であり、仮差止命令を発する根拠にはならないと判断した。したがって当面の間、スポーツ用品大手であるナイキは「Total 90」の再発売を継続することが可能となった。
もっとも、これは紛争が終結したことを意味するものではない。

ナイキが1対0でリード、しかし戦いは続く
 米国では、コモンロー上の権利、すなわち実際の使用によって商標権が発生するという法理が重要な役割を果たすことがある。この点に基づき、ナイキは、たとえ商標登録が失効したとしても、当該商標に関するコモンロー上の権利は存在すると主張することが可能である。
もっとも、そのためには、「Total 90」に関する権利が継続的な使用によって維持されてきたことを立証しなければならない。

ナイキの反撃
 さらにナイキは、Total90 LLCが取得した「TOTAL90」商標の登録取消しを請求した。ナイキは、Total90 LLCが悪意に基づいて行動したものだと主張した。
もしこの取消請求が認められれば、Total90 LLCによる商標権侵害訴訟の前提自体が崩れる可能性があり、その結果、ナイキの立場は大きく強化されることになる。

商標権者にとっての教訓
 ナイキの事例は、商標権者にとって商標登録を放棄する前に慎重な検討が必要であったことを強く示唆している。レトロブームの波に乗れば、長期間使用されていなかった商標であっても、再び注目を浴びる可能性があるからだ。
 とりわけ、スポーツやファッションのようにブランドやノスタルジーが商業的価値を有する分野では、商標登録の更新に支払う最小限の投資は、将来の紛争を未然に回避する観点からも十分に見合うものであろう。

本文は こちら (Nike brand revival leads to trademark conflict)