「quiet luxury(クワイエット・ラグジュアリー)」のような商業的概念は、容易に一般公衆の関心を惹きつけるかもしれないが、それがそのまま商標として登録できるとは限らない。
ここでは、2026年1月に欧州連合知的財産庁(EUIPO)が下した商標「Quite Luxury(まさに高級品)」に関する決定から得られる教訓をLaetitia Maufroyが紹介する。
世界的なマーケティング動向は、ブランド名にますます大きな影響を及ぼしている。「clean beauty」「slow fashion」「quiet luxury」といった表現は、特に高級品産業やファッション産業において、実質的な業界の分類として定着しているものの、これらの概念は商業的観点からは強力である一方で、商標法による法的独占性は依然として不確実である。
2026年1月5日にEUIPOが下した「Quite Luxury」に関する商標出願の査定は、世界的なマーケティング動向に直面した場合のEU商標法の限界を示すものとなった。この決定は、EU市場において識別標識の保護を確保しようとする企業にとって、有益な注意喚起となるものである。
「Quite Luxury」商標、登録拒絶の背景
Fashion Holding Düsseldorf GmbHは、「Quite」と「Luxury」という文字を特定の書体で表現した図形商標として、EUIPOに商標出願した。この出願は主としてファッションと高級品分野の商品(衣類、履物、皮革製品等)を指定していた。
EUIPOは絶対的拒絶理由に関する審査を実施した結果、「Quite Luxury」商標は登録できないと判断した。その理由は、関連する需要者にとって、出願商標が商品の商業的出所を示す表示ではなく、単なるマーケティング概念を指す宣伝的表現として理解されるにすぎないと考えられたためである。
したがって、EUIPOは2026年1月5日付で、識別力の欠如を理由として出願商標の登録を拒絶した。
拒絶の法的根拠
本決定は、EU商標に関する欧州議会及び理事会規則に基づいており、特に以下の規定が問題となった。
第7条1項(b):識別性を欠く商標は登録を拒絶される
第7条1項(c):商品又は役務の特徴を表示する記述的表示のみから成る商標は登録を拒絶される
さらに、確立した判例法によれば、商標が登録されるためには、関連する需要者が商標によって商品・役務の商業的出所を識別し、他の事業者の商品・役務と区別することが可能でなければならない。
EUIPOの分析:商標ではなく「概念」として認識される表現
(i) 関連する需要者の認識
EUIPOは、関連する需要者(とりわけEU内の英語理解者を含む)が、「Quite Luxury」という表現を、ラグジュアリー分野において広く知られているトレンド、すなわち、ミニマリスト的かつ誇示的でない形態のラグジュアリーを想起させる表現として直ちに理解すると判断した。このような理解は、商標としての本質的機能を果たすことを妨げるものである。
(ii) 本来的識別力の欠如
EUIPOは、「Quite Luxury」商標が宣伝的意味から明確に逸脱する要素を何ら示していないと認定した。換言すれば、その意味を理解するために、需要者に特別な解釈上の努力を要求するものではないということである。
したがって、この商標は、単に商品を促進するメッセージを伝えるにとどまり、特定の商業的出所を識別することを可能にするものではない。
(iii) 図形的又は様式的要素が不十分
出願人は、特定の書体を採用している点が、「Quite Luxury」商標に識別力を付与するのに十分であると主張した。しかしEUIPOは、この主張を退け、通常の範囲にとどまる様式的選択にすぎない場合には、本質的に記述的又は宣伝的な商標に識別力を付与することはできないと指摘した。
以上の理由から、EUIPOは、「Quite Luxury」商標は指定商品を単に記述するものにすぎないと判断し、その登録を拒絶した。
厳格で一貫したアプローチ
本決定は、確立した判例の流れと整合するものである。
すなわち、マーケティングの日常言語の一部となっている表現や、業界のトレンドを説明する表現は、すべての市場参加者が自由に使用できる状態に維持されなければならないという原則である。
EUIPOは、特に高級品やファッションのような競争が激しく国際化された分野において、商業的コミュニケーションに不可欠な概念が特定事業者によって独占されることを回避するよう配慮している。
企業にとっての実務的教訓
企業やそのマーケティング部門は、言語に対する欧州の公衆の理解の広がりを過小評価する場合がある。世界的文脈で広く使用されている英語表現は、一般にEUの消費者によって理解されるものとみなされ、EUIPOはその前提で審査する。
また本決定は、マーケティング上のポジショニング戦略が、必ずしも効果的な法的保護戦略と一致するわけではないことも想起させる。
企業にとって最善なのは、宣伝的スローガンを主要ブランドから切り離すこと、あるいは恣意的(arbitrary)、間接的に示唆的(indirectly evocative)、または造語的(invented)な商標を採用することである。
結論
「Quite Luxury」商標の登録拒絶は、マーケティング概念として成功していることだけでは、それが保護可能なブランドになるには不十分であることを示している。
トレンドが急速に国際的に拡散し、均質化が進む環境において、商標法は重要な防波堤として機能する。すなわち、排他的保護へのアクセスを可能にするのは、あくまで識別力であるという原則を改めて確認させるものである。
本文は こちら (Trademark protection and marketing trends: The case of ‘Quite Luxury’)
