企業がブランド名を正式に商標登録しないまま何年も使用しているのをときどき見られる。
同一の標章を第三者が商標登録出願を行うまでは、特に問題が生じないことも多い。今回の 「EASJOY」標章をめぐる最近の事案は、まさにそのようなケースであった。
中国のある製造業者は、2017年から「EASJOY」というブランド名でカラオケ機器やマイクロフォンを販売しており、いくつかの欧州諸国ではAmazonを通じた販売も行っていた。ところが、ドイツの起業家が文字商標「EASJOY」を欧州連合知的財産庁(EUIPO)に登録出願を行った際、中国の製造業者は、先行する未登録の権利を根拠として出願商標に対する異議申立てを試みたが、結局、異議申立ては認められなかった。
一般的に、未登録の権利に依拠して、他人のEU商標出願に対抗することも可能だが、そのためには明確な立証要件が課されている。すなわち、まず、地域的権利に依拠することを認める国内法上の規定が存在していなければならない。加えて、根拠とする標章が、後願の商標出願よりも前に取引の過程において使用されていること、かつ、その使用が単なる地域的な範囲にとどまらないものであることが必要とされる。言い換えれば、その標章が市場において実質的かつ認識可能な存在感を有していることが求められるのである。
この点を評価するに当たっては、使用の程度や期間、売上高の規模、商品が販売されている地域、さらに当該標章の下で行われた広告活動の程度といった要素が考慮される。
本件において問題となったのは、まさにこの点であった。請求書、販売注文書、商品ページのスクリーンショット等の証拠は提出されたものの、EUIPOは、当該標章が明確な市場上の地位を確立していたことを立証するには不十分であると判断した。売上数量は限定的であるように見受けられ、提出された証拠からは使用の程度や標章の評価・名声について明確な状況を把握することができなかった。その結果、使用によって十分に強固な商標権が成立しているとは認められなかった。
本件から得られる教訓は明確だ。未登録商標に基づく権利に依拠することにはリスクが伴う。説得力のある証拠を収集することは容易ではなく、求められる立証のハードルも高い。商標登録を適時行うことで、このような争点を回避することができる。商標法の分野でしばしば言われるとおり、予防は治療に勝るのである。
本文は こちら (Unregistered mark EASJOY cannot block EU trademark registration)
