(令和8年2月26日 知財高裁令和7年(行ケ)第10095号 「家屋の形状立体商標」事件)

事案の概要
原告(審判請求人・出願人)は、右掲図(他図略)の構成(『商標の詳細な説明』によれば、商標登録を受けようとする部分は、立体的である住宅の基礎コンクリート及び水切りの部分からなる立体商標であり、青色で示した部分は商標を構成する要素ではない)からなる本願商標、指定役務36類「建物の売買」及び37類「建設工事」(補正後)について登録出願をしたが、拒絶査定を受けて拒絶査定不服審判(不服2024-11964号)の請求をした処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて提訴した事案である。拒絶理由は、商標法3条1項3号に該当し、3条2項の要件を具備しないというものである。
判 旨
客観的に見て、商品の機能又は美観に資することを目的として採用されると認められる商品の形状は、特段の事情のない限り、商品の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法3条1項3号に該当すると解される。また、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、同種の商品について、機能又は美観に資することを目的とする形状の選択であると予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、同号に該当するものというべきである。
本願商標の構成は、前記のとおり、上面視四角形の周縁表面に石調の模様を施した住宅建物の基礎相当部分(水切り状の部分及び立ち上がり部分)を表してなり、建物下部の地面と接する部分の表面に凹凸をつけるとともに、縦線と横線を配してなるところ、構成全体として、凹凸、縦線及び横線の装飾を施した建物の基礎相当部分の形状を表している。このうちの建物部分の基礎(立ち上がり部分)につき、建物の基礎部分の機能又は美観向上のために、石材を用いたり、塗装や化粧モルタル施工等を行い表面に装飾をすることは一般に行われており、その中には、石調の素材等を使用し、その質感・素材感を再現したり重量感・ボリューム感があることを謳うものや、縦線や横線を施したものや目地による線を用いた意匠を施すもの、凹凸をつけたものなども存在する。また、乙5、6に示された一般の水切りの形状に比して、本願商標のうちの水切り状の部分に、特段の特徴があるものとは認められない。そうすると、本願商標の立体的形状は、建物の基礎部分について、機能又は美観に資することを目的として採用されたと認められるものであり、建物の基礎部分の形状として、本願商標の需要者において、機能の向上又は美観の向上を目的とする形状の変更又は装飾等を施したものと予想し得る範囲のものということができるから、それを超えて、本願商標の形状の特徴をもって、役務の出所を識別する標識として認識させるものとはいえない。したがって、本願商標に係る立体的形状は、商品の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法3条1項3号に該当するというべきである。上記の事情を総合すれば、本願商標が付されたとする商品(本願の役務の提供に供する物である建物の基礎。)の販売開始から約25年が経過していること及び販売地域が全国であること、原告の事業規模や売上高等を考慮しても、原告による宣伝広告の態様は、本願商標の出所識別標識としての認知度の向上に直ちにつながるものと認められないし、本願商標も、既に述べたとおり、需要者の目に付き易く、強い印象を与えるものであったということもできないから、本願商標が使用により自他商品識別力を有するに至ったと認めることはできない。
コメント
本件事案は、住宅の形状に係る立体商標について識別力が否定されて、審決が維持されたものである。指定役務に係る立体商標については、本件判決も、商品の機能又は美観に資することを目的として採用されると認められる商品の形状やそれらを予測し得る範囲のものは、商標法3条1項3号の商品の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標に該当するとして先例(令和6年12月25日 知財高裁令和6年(行ケ)第10058号 立体商標「歯形模型用支持台」事件等)の解釈に倣い、認定判断したもので、また使用による識別力の獲得も否定された。指定商品の形状や指定役務の用に供する物に係る形状についての商標登録の困難性を示した一例である。
