香港知的財産局の審判で証人の反対尋問が行われることは稀であるが、2025年に出された審決においては、そのような事例が2件報告されている。
そのうちの1件は商標の異議申立事件で、事件の訴因は、出願人が異議申立人の先行商標を模倣したか否か、それが悪意によるものか否かについてであった。出願人は証拠の一部として、出願人と密接な関係を持ち、出願商標の創作に関与したと主張する個人による宣誓供述書を提出した。これに対し、異議申立人は供述者の出廷と反対尋問を求め、認められた。
審判官(Hearing Officer)は、異議申立人による「模倣」の主張に対する出願人の反論を、以下のとおり要約している。
(i) 出願商標は、出願人のビジネスパートナーらが社内のブレインストーミングおよび議論を通じて創作したものである。出願商標は、パートナーの登録商標が組み込まれている。また、出願人の事業において使用・保有されている他の商標と類似したコンセプトを共有するものである。
(ii) 供述者(証人)は、出願商標に関する出願前調査およびデュー・デリジェンスを実施した人物であり、その調査結果において、異議申立人のよる同一商標の使用は確認されなかった。
(iii) 出願前に実施された調査およびデュー・デリジェンスによれば、出願商標は一般名称であることが示された。
(iv) 登録出願は、以上の事情すべてを考慮して行われたものである。
しかしながら、証人は反対尋問において、出願商標が出願人のビジネスパートナーらによって社内協議を通じて共同創作されたものであり、出願人の事業において使用・保有されている他の商標と類似のコンセプトを共有するものであるとの出願人の主張を維持したものの、主張を裏付ける証拠は存在せず、記録、内部メモ、テキスト、メッセージ等は一切提出されなかった。
同様に、証人は反対尋問において、Google検索を実施したこと、検索語のリストを有していたこと、ウェブサイト検索及び知財庁データベース検索等の各種調査を実施したと主張したが、検索語のリストに関する記録や、検索語に基づいて実施された各種調査およびデュー・デリジェンスに関する記録は存在しなかった。
審判官は審決において、出願商標の作成者や出願商標の概念とされるものについての出所が特定できないことのほか、関連する宣誓供述書や口頭証言にある、出願前に行われたとされる証人による調査およびデュー・デリジェンスに関する出願人側の証拠には、矛盾があり、かつ非論理的であると指摘している。
矛盾の一例は、上記(iii)に関するものである。すなわち、証人は、出願前調査により出願商標が一般名称であることが判明したと主張するが、そうであるならば、なぜ一般名称について登録出願を行ったのかという疑問が生じる。この点や他の関連する質問に対する証人の回答は、矛盾と非論理性に満ちたものであった。
審判官は、総じて証人による宣誓供述書および反対尋問における証言のいずれも、異議申立人の「模倣」主張に対する出願人の主張を裏付けるものとしては信用できないと判断した。その結果、出願商標が指定する役務に関して登録出願を行った出願人の行為は、当該分野における合理的かつ経験豊富な者が遵守すべき商業的な行動基準に照らして十分ではない。したがって登録出願は悪意に基づくものと判断し、出願商標の登録を拒絶した。
証拠(多くの場合、宣誓供述書)についてその真実性に疑義がある場合、係争手続を担当する商標実務家は、宣誓供述書の作成者に対する反対尋問を求めることも検討すべきである。反対尋問は一種の技であるが、商標実務家はこれに習熟しておくことが望ましい。
