2016-12-22

メロンまるごとソーダ事件

事件番号:知財高裁平成27年(行ケ)第10232号「メロンまるごとソーダ事件」 審決取消請求事件(平成28年4月14日)

事件概要
原告(出願人・審判請求人)は、本願商標(右掲参照)について、指定商品「メロンを用いたクリームソーダ」とする登録出願をしたが商標法3条1項3号に該当するとして拒絶査定を受けたので、拒絶査定不服審判(2015-7941)を請求した処、不成立の審決を受けたため、知財高裁に対し、その取消しを求めた事案である。

争 点 
指定商品「メロンを用いたクリームソーダ」に使用をする本願商標は3条1項3号に該当するか否か。

結 論
認定事実によれば、本件審決時、果実を利用した飲料や菓子等の取引分野において、「まるごと」の語は、当該果実の果肉や果汁が残さず用いられていることや、当該果実がその形状のまま用いられていることを表す語として、一般に理解されていたことが認められる。そして、「メロン」、「まるごと」及び「クリームソーダ」の各語の意義に加え、「まるごと」の語が果実を表す語と結合した場合や当該果実を形容する語として用いられた場合の一般的な理解の内容に照らすと、本願商標は、「メロンの果肉や果汁が残さず用いられたアイスクリームソーダ」や「メロンの外皮を容器としてそのまま用いたアイスクリームソーダ」を意味するものとして、一般に認識されるものであったと認められる。
そうすると、本願商標は、指定商品の品質を表示するものとして、一般に認識されるものであり、かつ、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであったと認められ、特定人に独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、自他商品識別力を欠くものというべきである。

コメント
本件判決は、本願商標は指定商品の品質表示と認定、判断して、審決を維持したものである。指定商品「メロンを用いたクリームソーダ」の内容を記述的に表示したもので、品質表示との判断は正当である。出願人は、使用例の不存在や各既成語の配列の妙に登録性を見出そうと主張したが、商標全体における当該需要者の一般的な理解、認識から識別性の有無が判断される(3条1項6号)。これに独占性の適否が加わる。業界での使用例の有無は問題とされない。最近、3条1項各号事案で、3条2項適用例を除き、知財高裁で取り消された例はない。(工藤莞司)