2017-07-18

インド:商号と商標の争いで商号を保護 – Chadha & Chadha

ボンベイ高等裁判所のフル・ベンチ(3名の裁判官による合議体)は、最近ムンバイに本社を置く製薬会社、シプラ(原告:CIPLA Limited)とデリーのリフォーム会社、 Cipla Industries Pvt. Ltd(被告)の争いに判決を下し、異なる商品・サービス分野において、他の事業体の社名や商号に登録された商標を使用する問題について明らかにした。

原告が所有する「CIPLA」商標は、長年にわたって社名や商号の一部として使用されており、また主に商標区分第5類の医薬品分野の商品に使用されていた。被告は、社名や商号の一部として「CIPLA」という名前を使用し、医薬品とは異なる分野で使用していた。なお、商標区分第21類(家庭用器具等)で、「CIPLA PLAST」という登録商標を所有している。

インドにおける商標法の下では、とりわけ、標章が先行商標と同一又は類似している場合、商品・サービスが類似であっても非類似であっても、商標権侵害が認められることがあるが、商品・サービスが類似していれば、社名や商号として標章を使用する場合も同様とされる。ボンベイ高等裁判所は、2007年のRaymond Limited と Raymond Pharmaceuticals Pvt. Ltd の裁判で、「特別法は一般法に優越する(specialibus non derogant)」との法格言を引用し、商標法第29条(登録商標の侵害)、第5項(登録商標は,当該登録商標を自己の商号若しくは商号の一部として又は指定商品若しくはサービスを取り扱う会社の社名若しくは社名の一部として使用する者によって,侵害される)が、商標法第29条第4項(登録商標は,登録所有者でない者又は許諾使用による使用者でない者が,業として標章を使用し,それが次の標章であるときは,侵害される)より優先されると判じ、レイモンド事件で、問題となった商号は該当する商品・サービスとは分野が異なっていたため、侵害とは認めなかった。

フルベンチ(3名の裁判官による合議体)
「CIPLA」事件のフルベンチは、事実上侵害が認められるためには、登録された商標と同じ商品・サービス分野において標章が社名の一部として使用される必要がある。したがって、登録商標が分野の異なる商品・サービスに関して社名・商号として使用される場合、侵害の理由は存在しないと結論づけた。

この決定により、他人が標章を誠実に使用することや正当な使用者の権利を保護することから大企業が不公正に禁止する行為を妨げる一方、著名商標の所有者の権利を完全に保護するものではない。商標法第29条第5項は、それに内在する条件が満たされることを必要とする「無過失規定」である性格上、混同のおそれを証明する必要はない。したがって、商標法第29条の下では、商標権者は標章が従来の意味で使用され、相手がそれを社名若しくは社名の一部として使用する場合や、両標章が対象とする商品・サービスが類似していない場合は、侵害行為を証明することが困難になるかもしれない。

本文は こちら (Cipla Protects its Corporate and Trade Name in a Battle between Trade Name and Trade Mark Jurisprudence)