事 件: 知財高裁平成26年(行ケ)第10196号「亀屋陸奥」審決取消請求事件(平成27年4月27日)
事案の概要 原告は、下掲商標(「本件商標」)について、指定商品「菓子、パン、穀物の加工品」として商標登録を受けた商標権者である。被告は、本件商標を色無地の上に白抜き表示した商標又は本件商標を白無地の上にエンボス加工して表示した商標(「引用商標」)を焼き菓子「松風」に使用する者である処、商標法4条1項19号違反として、本件商標の登録について無効審判(無効2013-890081号)の請求をした。特許庁は成立審決をしたため、被請求人(商標権者)が知財高裁に対し、審決の取消しを求めた事案である。
争 点 商標法4条1項19号該当性の有無。
結論 ・引用商標の周知性 被告が老舗であると共に、「松風」の包装に付された引用商標も、取引者・需要者の間で本件出願時及び登録査定時において相当程度知られていたものと認められる。 ・原告の不正の目的 原告は、・・・原告のみが「松風」に本件商標を正当に使用できる人物であると確信していた旨述べるなど、「龜屋陸奥の松風」の正統な継承者は自身であり、引用商標に表象される業務上の信用も自身に帰属するかのような発言をしており、・・・原告は、カタログやウェブサイト、原告自身のツイッター等において、外部的にもそのように振る舞っていたことが認められる。そうすると、原告による本件商標の使用は、引用商標に表象される被告の老舗としての価値、業務上の信用を自身に帰属させようとするもので、「不正の目的」をもって使用するものに該当するというべきである。
コメント 4条1項19号の不正の目的の有無がポイントで、原告は、被告の元取締役で、その父も被告の先代であった者。このため、被告の取締役解任後、被告と同業を営み、自らが老舗被告の正当な承継人の如き言動をして、本件商標を使用した点において、不正の目的があるとされたものである。引用商標について、老舗被告が未登録であった点は頷けない。
工藤 莞司