2016-08-12

“マック” は誰のもの? —- by R.K.DEWAN

マクドナルドには、‘Mc’ や ‘Mac’のような著名な標章の侵害行為に対して積極的に対応する知財エンフォースメント・チームが存在していることが知られている。これら2つの標章は、世界中で様々な係争対象となっているが、最近オーストラリアと欧州でマクドナルドが勝訴した案件について述べる。

オーストラリア(‘McKosher’ 事件)                                                                         商標‘McKosher’ がオーストラリア特許庁に出願され、当該商標に ‘Mc’ が含まれていたため、マクドナルドが異議申立を行った事件。出願商標は食品・飲料に関連して使用されており、商品には「食用藻類」等と記載されていた。出願人は‘McKosher’ が、スコットランド系ユダヤ人伝来の表現で、接頭語‘Mc’ or ‘Mac’ を普通に使用するMacLean 地区でのみで使われていた、と主張した。これに対して、マクドナルドは接頭語‘Mc’ の使用は消費者に混同をもたらし混乱を与えると反論し、またイスラエルのラビ教指導者たちがマクドナルドに対し、コ―シャー(Kosher: ユダヤ教の食事規定に従った食品)・フレンドリー・レストランを、改めて‘McKosher’ のようにブランディングするよう要求している、ことも主張した。結果、‘McKosher’ の商標登録は拒絶された。この決定は、‘McKosher’ が食品・飲料の分野で使用できないことを意味するが、もし他の分野での使用を制限されるとしたら不公平であろう。

欧州(‘MACCOFFEE’ 事件)                                                                                 シンガポール・ベースの企業が ‘MACCOFFEE’ 商標をEUIPOで商標登録を目指した案件。本件はマクドナルドによって異議申立が行われ、商標登録は認められなかった。一般裁判所(General Court)は、マクドナルドの著名性により、マクドナルドが食品・飲料の分野で接頭語‘Mc’or‘Mac’を使用することを阻むことは許される、と判じた。オーストラリア特許庁やEUの一般裁判所の判断は、名声や努力によって生まれた利益を享受できるのはその所有者のみであることが論拠となっているが、著名商標を守るために、善良な第三者が不利益を被るのは如何なものか。

詳細は こちら(McDonalds’ loving it)