事件番号: 知財高裁平成26年(行ケ)第10112号「軽井沢浅間高原ビール事件」審決取消請求事件(平成26年12月8日)
事案概要 請求人(被告)は、被請求人(原告)が有する指定商品「エールビール・・・その他のビール 」に係る「軽井沢浅間高原ビール」(標準文字 本件商標)の商標登録に対し、請求人らが使用する「軽井沢高原ビール」を引用して商標法4条1項15号等違反を理由に無効審判を請求したところ、特許庁は成立の審決をしたため、被請求人が知財高裁に審決の取消しを求めた事案である。
争 点 本件商標に係る指定商品と引用商標を使用する被告らの業務に係る商品とについて混同を生じるおそれの有無(商標法4条1項15号)である。
結 論 認定事実からすると、被告商品に付された引用商標は、被告ヤッホーの業務に係るビールを表示するものとして、遅くとも、本件登録出願前には、長野県内及び関東地方の取引者、需要者の間に広く認識されていたものといえ、その周知性は、本件商標の登録査定時においても継続していたものといえる。 そして、①本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても近似し、また、②引用商標は、被告ヤッホーの業務に係るビールを表示するものとして、長野県内及び関東地方の取引者・需要者の間に広く認識されていたものといえ、さらに、③本件商標の指定商品と被告商品とは同一であって、④本件商標の指定商品と被告商品とは取引者・需要者を共通としているといえる。 以上の事情に照らせば、本件商標をその指定商品に使用するときは、その取引者・需要者において、同商品が被告ヤッホーの業務に係る商品と混同を生じるおそれがあるというべきである。
コメント 本件商標「軽井沢浅間高原ビール」と引用商標「軽井沢高原ビール」との間において、商標法4条1項15号に係る出所の混同の虞について争われ、肯定した審決を知財高裁も、支持したものである。その判断は、判例(「レール・デュタン事件」最高裁平成10年(行ヒ)第85号 平成12年7月11日)が示した基準に基づいて丁寧に判断したもので、この点は審決でも同様である。中でも、両商標の類似性については「近似する」と、また引用商標については、全国的ではなく、「長野県内及び関東地方の周知」をもって混同のおそれを判断している点が注目される。
工藤 莞司