2016-08-15

雪中熟成事件

事件番号: 知財高裁平成27年(行ケ)第10085号 「雪中熟成事件」審決取消請求事件(平成27年9月17日)

事件概要                                 出願人(原告)は、「雪中熟成」の標準文字からなる商標(「本願商標」)について、指定商品「第29類 加工水産物、食用魚介類(生きているものを除く。)」として登録出願をした処、商標法3条1項3号に該当するとして拒絶査定を受けたので、拒絶査定不服審判を請求したが、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めた事案である。

争 点 本願商標「雪中熟成」の商標法3条1項3号該当性

結 論                                  果物、野菜、食肉、味噌、アルコール飲料等の飲食料品関連の業界分野においては、本件審決時までに、新聞やウェブサイトにおいて、本願商標と同じ「雪中熟成」の語や「雪中」又は「熟成」、これと同義の「雪の中」又は「雪の中で熟成」等の語について、その品質又は生産の方法を示すものとして、雪の中又は雪氷室ないし雪室で熟成させた商品との意味合いで用いられていることが認められる。これらと本件指定商品を取り扱う業界分野とは、その取引者、需要者を共通にする場合も多いことが推認できる。            前記認定事実によれば、本願商標「雪中熟成」は、本件審決当時、「雪の中で熟成すること」等の意味合いを有する語として、本件指定商品の取引者、需要者によって一般に認識されるものであったことが認められる。したがって、本願商標は、本件指定商品に使用されたときは、「雪の中で熟成された商品」といった商品の品質又は生産の方法を表示するものとして、取引者、需要者によって一般に認識されるものであり、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないものであり、自他商品の識別力を欠くものというべきである。

コメント                                  典型的な3条1項3号に係る識別力なしの裁判例である。原告主張のように指定商品自体には取引上の同一使用例がなくとも、識別力の有無は、取引者・需要者の認識の問題であるから(3条1項6号)、認定事実関係の下では、識別力なしとして、3号該当の判断に至ることになる。                                 また、先登録例は参考程度で、判断には影響しない。本願商標について、個別具体的に識別力があることを独自に主張し、立証することが必須である。

工藤 莞司