薬剤商標ではその一部に共通する名称が使われることがよくある。つまり名称の構成が接頭語、接尾語と一緒に、製品の特徴や要素、効能を想起させるような言葉の組み合わせとなる。名称を考える場合、他の権利者や他の標章と誤認混同を起こさない限りどんな言葉を用いてもよい。
5類(薬剤)の商標でよく利用される接頭語に「CORTI」がある。「CORTI」はコルチステロイドの活性物質や「cortisone(補足:コルチゾンは副腎皮質から分泌されるホルモンの一種)」を想起させる。現在「CORTI」を接頭語とする商標には「CORTIFLEX」, 「CORTIMED」, 「CORTICREM」, 「CORTIFENOL」, 「CORTIDERM 10」等があり、それぞれ別の権利者によって登録されている。
アンデス共同体の常設裁判所は、標章として普通に使用される接頭語、接尾語、語幹、語尾は一人が独占的に使用するものではなく、一人に独占させるものではない、との判例を確立した。しかしながら薬剤商標が一部でも共通の名称を含むことで、類似する名称が増えれば誤認混同の虞は増すことになる。
アンデス共同体の常設裁判所は「Process 08-IP-2013」の中で、商標の誤認混同を避けることによって、効能の異なる薬剤を渡され健康被害をもたらす消費者を守ることができるとし、「Process 30-IP-2000」では、薬剤商標の類似審査に於ける専門知識の必要性に言及し、より多くの労力をかけて研究すべきだとしている。また、「Process No. 68-IP-2001」では、結論として薬剤製品はその性質を見極めることが大変重要で、ものによっては深刻な健康被害を引き起こすとし、消費者の混同を避けるためには商標の異議審査を厳格に行うことを提案した。ペルー競争防衛知的財産権保護庁 (INDECOPI)の特別協議会は、一般消費者だけではなく薬剤師に関しても、薬品の発音名称や外観によって薬品を混同しないようにするための検討を行っている。
類否の例として、出願された文字商標「CORTIDEX」は文字商標「CORTIPREX」の権利者から異議を申立てられたケースがあった。「CORTIPREX」の権利者は「CORTI」が共通するとして、外観的にも称呼的にも類似すると主張したが、INDECOPIの標章局(Commission of Distinctive Signs)は、異議を退け「CORTIDEX」の商標登録を認めた。標章局によると、両商標は子音の配列(C-R-T-D-X / C-R-T-P-R-X)が異なり、最後の音節(DEX / PREX)も異なっているため、異なる発音となり、全体的な外観も相違するため、「CORTI」が共通するとしても、「CORTI」は5類で幾つかの登録商標の一部となっていることからしても、両商標が明白に類似を構成するとまでは言えない、と判じた。
当事務所としての見解は、「CORTIDEX」と「CORTIPREX」は極めて類似であるとするものだ。なぜならば、両商標は共通する接頭語「CORTI」と接尾語「EX」を持ち、母音の配列 (O-I-E) が同じであることから、類似する外観と称呼が生じるため消費者に混同を与える。
故に薬剤商標では普通に使われる名称に何か別の要素を加えることがとても重要となる。但し、知的財産の登録に優先しなければないないのは消費者の基本的な権利である健康と生命のセーフガードである。
本文は こちら (COMMON TERMS IN PHARMACEUTICAL TRADEMARKS)