2016-12-22

なごみ侵害事件

事件番号:東京地裁平成27年(ワ)第8132号「なごみ侵害事件」 損害賠償請求事件(平成28年2月9日)

事件概要 本件は、「なごみ」の文字を横書きしてなり、指定商品をマットレス、布団等とする商標権(登録第2081173号)を有する原告が、被告らに対し、被告らによる下掲標章外の使用が本件商標権の侵害に当たる旨主張して、損害賠償金等を求めた事案である。 

争 点  本件商標と引用商標の類似性

結 論 
本件商標から「ナゴミ」の称呼及び「穏やかな気持ち、くつろいだ気分 」の観念が生ずる。被告標章には、その全体から、「エアウィーヴシキフトンナゴミ」、「エアウィーヴシキブトンナゴミ」の称呼が生じ、「エアウィーヴ」の語の周知性及び「四季布団」の漢字の意義から「被告らの製造販売に係るマットレス類であって、年間を通じて使用し得る敷き布団であり、穏やかな気持ち、くつろいだ気分にさせるもの」の観念が生じる。一方、被告標章は、称呼上は比較的長く、必ずしも一息で発音され一目で視認され得るものでない。これに加え、被告標章は、「和」の文字が隅付き括弧で囲まれて目立つようになっており、その後ろに「なごみ」と表記されているため、・・・その外観上「和」の読み方を示す「なごみ」の部分が独立して、需要者の関心を引くとみることができる。
そうすると、被告標章からは、「なごみ」の部分から「ナゴミ」の称呼及びこれに伴う観念が生じると認められ、本件商標と被告ら各標章は、称呼及び観念を共通にする。

コメント
商標法37条1号に係る結合商標の類似性について争われて、類似と判断された。最近、4条1項11号に係る商標の類似に関する判例「セイコーアイ事件」判例(最高裁平成3年(行ツ)第103号 平成5年9月10日 民集47巻7号5009頁)に従い分離観察を否定して非類似判断が多く占め、これが侵害裁判例にも影響している(「湯ートピアかんなみ事件」知財高裁平成27年(ネ)第10037号 平成27年11月5日)。こうした中で、従来基準(「リラ宝塚事件」判例)(最高裁昭和37年(オ)第953号 昭和38年12月5日 民集17巻12号1621頁))で、分離観察をして類似と判断したもので、妥当である。なお、被告は、本件商標は3条1項3号違反等の無効理由があるとして、権利行使制限の抗弁(39条・特許法104条の3)をしたが否定されている。(工藤莞司)