2016-12-22

サンローラン不使用取消事件

事件番号:知財高裁平成27年(行ケ)第10067号「サンローラン不使用取消事件」審決取消請求事件(平成27年12月10日)

事案の概要
原告は、本件商標の登録は、使用した事実がないから商標法50条1項の規定により取り消されるべきであるとして、その商標登録の取消しを求めて審判の請求をした処、特許庁は不成立の審決をしたため、知財高裁に対し、その取消しを求めた事案である。

争 点 
本件審決は、被告(被請求人・商標権者)との関係性の強い取引先代表者の購入確認書という極めて主観的で、容易に作成可能な証拠のみに基づいて、売上伝票に記載の各商品が、上記購入確認書等に記載された写真に撮影されている各商品と認定し、本件商標の使用を認めたことは違法か否か。

結 論 
被告取引先の各代表者の作成・提出に係る購入確認書(乙13、14)は、その体裁、内容及び作成名義等について、特段、疑義を生じさせるものではなく、同購入確認書の記載内容に従って事実認定をすることができないとする根拠はない。原告は、上記購入確認書の信用性を疑わせるに足りる具体的事実を何ら主張立証しないで、被告取引先の各代表者が作成・提出したもので、容易に準備作成可能な証拠であるとの理由だけで、同購入確認書を、極めて主観的で証拠価値の認められないものと主張するものにすぎない。

コメント 
不使用取消審判において、被請求人(被告・商標権者)が提出した使用証拠の証明力が争われた事案である。原告主張の「被告との関係性の強い取引先の代表者の購入確認書という極めて主観的で、いつでも容易に準備作成可能な証拠」の採否が問題とされたが、裁判所は、「特段、疑義を生じさせるものではなく、同購入確認書の記載内容に従って事実認定をすることができないとする根拠はない」とした。裁判所は、経験則に従い記載内容に係る事実について心証を形成するもので、これを阻止、否定するためには、記載内容に対する疑義や矛盾などについて反証を要するとし、単に作成容易な証拠との主張だけでは困難としたものである。(工藤莞司)