新しく商標を出願する前に、まず行うことは商標の使用に関する調査であろう。調査で様々な同一または類似する商標が見つかったときは、その商標登録にしばしば困難が伴う。ただし、調査で見つかった商標が異なる事情分野での使用に限られている場合や、使用されていない場合のように、交渉の余地がある場合も少なくない。このような場合は商標出願をして、異議を待つ戦略を取ることもある。
その後、商標が問題なく登録されれば、その商標の使用に立ちはだかるものはない。しかし、登録後何年も経ってから無効審判を請求されることがある。「BASTARD(ろくでなし)」と「ARROGANT BASTARD(思いあがったろくでなし)」の争いのように、稀にだが起こりうる。「ARROGANT BASTARD」商標は、欧州連合(EU)で約10年間登録されているが、ドイツでの先願商標「BASTARD」に基づいて無効審判が請求された。
「ARROGANT BASTARD」商標の所有者は、黙認によるものだとする答弁書を提出した。通常、当事者が登録商標を認識し当該商標の使用を黙認していた場合、5年間経過すれば当該商標の無効請求理由がなくなる。しかし、その黙認を証明するには当該商標を認識している証拠や認識の証が必要である。EUIPOは先願商標の保有者の認識の証を確認することなく無効請求を受け入れている。