2017-06-23

日本:注目裁判例「TOMATO SYSTEM」事件 ー 工藤莞司弁理士

指定役務第42類に係る本願商標「TOMATO SYSTEM」と引用商標「TOMATO」は類似すると判断した審決が支持された事例(「TOMATO SYSTEM事件」知財高裁平成28年(行ケ)第120208号 平成29年3月23日) 

事案の概要 本件は、原告(出願人・請求人)出願の第42類「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守、・・・電子計算機用プログラムの提供」等に係る本願商標「TOMATO SYSTEM」に対して、第42類「電子計算機その他の用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明、電子計算機用プログラム・コンピューターソフトウェア及びCD-ROMの設計」に係る登録商標「TOMATO」を引用商標とする商標法4条1項11号該当の拒絶査定不服審判(2016-2278)において、特許庁が不成立審決をしたため、請求人が知財高裁にその取消しを求めた事案である。

判 旨 本願商標中の「SYSTEM」の語は、役務の質を表したものとして、出所識別機能がないか又は極めて弱い。一方、「TOMATO」の語からは、野菜のトマトが想起され、強い印象を取引者又は需要者に与える。したがって、本願商標は、「TOMATO」部分が、需要者等に対し、商品又は役務の出所識別標識として、強く支配的な印象を与える。そうすると、本願商標の要部は「TOMATO」の部分と認められる。本願商標と引用商標とは類似し、本願指定役務と引用指定役務も類似して、本願商標は、商標法4条1項11号に該当する。

原告は、標準文字で「TOMATO」と表した引用商標は商標法3条1項5号又は同項6号に該当する商標であるから、無効であると主張する。しかしながら、「TOMATO」の商標が、「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」ということはできないから、引用商標が商標法3条1項5号に該当することはない。また、引用商標が、指定役務との関係において、出所識別機能を欠くと直ちに認めることはできないから、商標法3条1項6号に該当することもない。

解 説 本件は、明らかな結合商標の要部観察の例で、判決の類似の判断は正当である。しかし、引用商標の登録が無効との原告主張に対しては、理由を付して無効ではない旨判断している(判旨後段)が、これは肯定できない。39条準用の特許法104条の3規定の権利行使制限の抗弁と同旨の主張であろうが、これは不登録理由商標法4条1項11号等には適用ないことは明らかである。別途無効審判によるのが商標法の規定である。従来の審決取消訴訟では、明らかに排除している(知財高裁平成19年(行ケ)第10051号 平成19年7月19日外)。