最近、欧州司法裁判所(CJEU)は、オランダのISPがBitTorrent(P2P通信を行うソフトウェア)の検索サイトである「The Pirate Bay(パイレート・ベイ)」のアクセスを強制的にブロックすることができるとの判断を示した。CJEUは、パイレート・ベイのようなオンライン・ファイル共有プラットフォームの提供・管理は、著作権侵害を構成する可能性のある公衆送信行為とみなされなければならないと指摘した。
パイレート・ベイは、ユーザーがいわゆる「トレントファイル」を交換することで、音楽、映画、その他のコンテンツをアップロードし共有するためのプラットフォームだ。これらのファイルには実際の著作物は含まれていないが、著作権で保護されているかもしれないファイル(作品)を参照(リンク)している。オランダでは、著作権利者団体(Stichting Brein)とインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)のZiggoとXS4ALLの間で長年にわたって法廷で争われており、Stichting Breinは、ISPがパイレート・ベイのドメイン名とIPアドレスをブロックするように求めていた。
2012年、オランダの第一審裁判所は、パイレート・ベイのアクセスをブロックするよう命じる判決を下したが控訴審で覆された。Stichting Breinは、オランダ最高裁判所に上訴し、オランダ最高裁判所は、パイレート・ベイのようなファイル共有プラットフォームを介してトレントファイル入手可能とすることが、EU著作権指令の「公衆送信」であたるか、著作権侵害を構成する可能性があるかという問題についての見解をCJEUに求めた。
「公衆送信」を構成するもの:
公衆送信の概念は、権利者が独占権を持つ著作物を利用可能にする権利に属する。これには次の累積的な要件を伴っている。
- 著作物の「送信行為」:論理的な帰結として、著作権で保護された作品のアクセス権を視聴者に与える行為
- その著作物を送信する「公衆」:不定数で、かなり多くの視聴者を示唆している
CJEUの判断:
CJEUは、パイレート・ベイのようなオンライン・ファイル共有プラットフォームの提供・管理が、EU著作権指令の解釈において、公衆送信行為とみなさなければならないとの判断を示した。
「送信行為」であるための第1の要件は、個人が個々に選んだ場所と時にアクセスを実行できることであり、ISP自身が著作物をアップロードしたかどうかではなく、共有プラットフォーム運営者がそれらの作品にアクセスできるようにするために「不可欠な役割」を果たしていることで、パイレート・ベイは、積極的に検索エンジンを提供し、ファイルを分類し、特定のコンテンツをフィルタリングしている。したがって、共有プラットフォーム運営者は、著作権で保護された作品へのアクセスを権利者の同意なしに提供しているかどうか知らないはずはない。また、広告販売でかなりの収入が生まれるのだから、利益を得るという目的で活動が行われている。
また、公衆送信行為によって、新たな公衆がターゲットとされることで2番目の要件を満たすことになる。証拠によると、ZiggoとXS4ALLユーザーの多くがパイレート・ベイ経由でファイルをダウンロードしたことを示しており、共有プラットフォームは何百万人もの人々によって使用されており、彼らは、その著作物の公衆への最初の送信を許諾した時に著作権者が既に考慮に入っていない公衆、つまり新たな公衆である、とCJEUは指摘している。
CJEUは、予備的な質問に答えることで以下のように結論付けた。「欧州指令2001/29の第3条第1項の意味における「公衆送信」の概念は、著作物に関するメタデータのインデキシング及び検索エンジンの提供という手段により、そのファイル共有プラットフォームの利用者にP2P(ピアツーピア)ネットワークで著作物を配置し、ファイルを共有することを可能とするインターネット上での提供及び管理を含んでいる、と解釈されなくてはならない」。
オランダ最高裁の判決:
この事件は、オランダ最高裁判所に戻って最終的な判決が下されることになる。パイレート・ベイは、英国含むヨーロッパの多くのISPによって既にブロックされている。しかし、この判決がヨーロッパ諸国のより広いエリアにおける先例となる可能性がある。
本文は こちら (CJEU landmark ruling could lead to Dutch ban on The Pirate Bay)