2017-08-28

中国:「微信」商標に関する異議不服審判行政事件 - 林達劉グループ

二審案件番号:(2015)高行(知)終字第1538号
合議体:焦彦、莎日娜、周波
原告:創博亜太科技(山東)有限公司(以下「創博亜太公司」という)
被告:国家工商行政管理総局商標審判委員会(以下「商標審判委員会」という)
第三者:張新河

【概要】
創博亜太公司は、2010年11月12日に、第8840949号「微信」商標(以下「被異議申立商標」という)を第38類の「メッセージ(情報)の送信、電話によるサービス、電話による通信、セルラー式電話による通信」などの指定役務において登録出願した。法定の異議申立期間内に、張新河は当該商標に対して異議を申し立てた。2013年3月19日に、商標局は被異議申立商標の登録出願を拒絶するという審決を下した。創博亜太公司は商標局の裁定を不服とし、商標審判委員会に異議申立不服審判請求を行った。2014年10月22日に、商標審判委員会は第67139号審決を下した。当該審決によれば、被異議申立商標の登録出願が社会公益と公の秩序に消極的、ネガティブな影響を与える可能性があり、既に『商標法』第10条1項(8)の禁じられた状況に該当するため、被異議申立商標の登録出願を拒絶すると決定した。創博亜太公司は当該審決を不服とし、行政訴訟を提起した。

裁判所は以下のとおり認めている。被異議申立商標が漢字「微信」より構成されている。既存の証拠を以って、当該商標標識又はその構成要素が中国の政治・経済・文化・宗教・民族などの社会公益と公の秩序に消極的、ネガティブな影響を与える可能性があることを十分に証明できない。よって、被異議申立商標の登録出願が『商標法』第10条1項(8)の規定に違反しない。商標審判委員会が第67139号審決において、被異議申立商標の登録出願が『商標法』第11条1項の規定に違反したかのことについて認定したが、全面審査の原則に従い、裁判所はこの点についても審査すべきである。これに基づき、裁判所は被異議申立商標が上述の指定役務において顕著性を欠如するので、その登録出願が拒絶されるべきだと認める。したがって、裁判所は第67139号審決にある間違った認定を是正したうえ、商標審判委員会の裁定(結論)を維持する。

【コメント】
本事件を審理した際、テンセント(騰訊控股有限会社)のソフトウェア「微信」は既に8億超のユーザーが持ったため、本事件の審理結果は膨大なユーザー群が当該名称でそのソフトウェアを使用し続けるかと直接に関連する。この案件について、社会の注目度が高く、影響が広い。しかも、本事件は、『商標法』の重要な関連法律条項及び最高人民裁判所の関連指導意見の適用問題にかかるため、法律及び社会影響においても、比較的大きな影響力があり、学界、実務界及び社会公衆の関心が高まっている。二審裁判所が、「その他の悪影響」の認定対象を商標標識及びその構成要素自身に限定し、最高人民裁判所の「その他の悪影響」に関する認定基準を堅持して、裁判基準の一貫性を守った。同時に、二審裁判所は本事件において行政訴訟の全面審査原則を模索して、今後の関連司法解釈の発表に、司法実践における基礎を築き上げた。