概要
林達劉グループが代理した株式会社ヤクルト本社(以下「ヤクルト本社」という)の「益菌多」商標権侵害及び不正競争事件で、権利者の合法的な権益を成功裏で保護することができた。上海知識産権裁判所は、二審判決において一審判決を維持し、侵害者に対し、直ちに「益力多」及び「養楽多」製品の知名商品の特有包装・装飾に類似する5本パックの包装・装飾の使用を停止することを命じると同時に、侵害者がその製品に標識「益菌多」を使用した行為は、権利者の登録商標専用権に対する侵害を構成するので、侵害者に対し、侵害行為を停止し、かつヤクルト本社の経済損失及び合理的な費用70万元を賠償することを命じた。以下は、上海知識産権裁判所のウェブサイトにおける事件紹介である。
詳細
商品「益力多」と「養楽多」について、幼児を育てている親は誰でも知っている商品であり、多くの幼児は、当該飲み物を飲んだことがあるだろう。今年の初め、上海知識産権裁判所は、「益力多」と「養楽多」の権利者が「益菌多」を訴えた乳酸菌飲料に係る上訴案件を受理した。5月に公開的に開廷審理を行い、かつ、上海市食品・薬品監督管理局の関係者を集めて、本案件の全ての審理過程を傍聴した。最近、本案件は審理終結され、上海知識産権裁判所により原判決を維持する二審判決が言い渡された。
上海知識産権裁判所は、「浙江果然食品有限公司」(以下「果然社」という)に対し、直ちにヤクルト本社が享有する登録商標の専用権に対する侵害を停止し、かつ、直ちに「益力多」と「養楽多」製品に係る知名商品の特有包装・装飾に類似する5本パック包装・装飾の使用を停止し、ヤクルト本社の経済損失及び合理的な費用70万元を賠償することを命じた。また、上海楽客瑪超市有限公司(以下「楽客瑪社」という)に対し、直ちに果然社が生産した発酵乳飲料「益菌多」の販売行為を停止することを命じた。
ヤクルト本社は、1949年1月に設立し、「上海益力多乳品有限公司」(以下「上海益力多社」という)と養楽多(中国)投資有限公司(以下「養楽多中国」という)は、いずれもヤクルト本社が中国で出資・設立した会社である。係争商品の中国語の訳名は二種類があって、一つは「益力多」として主に広東省で販売されており、もう一つは「養楽多」として前者「益力多」の販売地域以外で販売されている。ヤクルト本社は、「益力多」及び「養楽多」製品の容器瓶と5本パックの包装・装飾の著作権及び複数の登録商標「益力多」の専用権を享有している。
権利者ヤクルト本社は、侵害者果然社が自社の許可を得ずに、無断で同社が生産し、楽客瑪社が販売している乳飲料製品に対し、係争製品に類似する包装箱・容器を使用し、かつ、登録商標「益力多」に類似する標章「益菌多」を使用し、自社の商標権に対する侵害、及び自社の知名商品の特有包装・装飾を無断で使用した不正競争行為を構成することを見付けた。両侵害者の侵害行為が権利者に巨大な経済損失をもたらしていたので、ヤクルト本社は、裁判所に提訴し、両侵害者に対し、直ちに「益菌多」発酵乳飲料に対する製造・販売・宣伝行為を停止し、在庫及び関連宣伝資料を廃棄し、全ての未販売の「益菌多」発酵乳飲料及び関連宣伝資料を回収廃棄し、権利者の経済損失及び合理的な費用120万元を賠償することを命じるよう請求した。
侵害者果然社は、被疑侵害製品に使用された「益菌多」は通用名称に該当し、被疑侵害製品の容器瓶も業界の通用容器であり、かつ、権利者の製品の形状との間に顕著な相異があるので、関連公衆に混同をもたらすようなおそれがないと主張した。
一審裁判所は、審理を経て、次のとおり認めた。
被疑侵害製品とヤクルト本社が権利主張した7件の登録商標の指定商品は、同一又は類似の商品を構成する。果然社が自社の容器瓶及び外包装のいずれにも、文字「益菌多」を際立てて明記し、当該文字は、商品の出所を区分するために、商業標識としての機能を果たしていたので、商標的な使用に該当し、通用名称に該当しない。両者の対比によれば、被疑侵害製品に使用された字体「益菌多」は、ヤクルト本社が主張した文字商標「益力多」に比べ、一つの文字しか相違せず、かつ、その称呼も類似し、使用された字体も類似している。また、果然社が文字「益菌多」と括弧と結合して使用した方法は、その文字の組み合わせ又は図形の構造において、いずれもヤクルト本社が主張する平面商標と類似する。そして、果然社が文字「益菌多」とその商品の容器瓶を結合して使用した方法は、その構造、形状及び全体の視覚効果において、いずれもヤクルト本社が主張した立体商標と類似している。更に、「益力多」商品の高い知名度は、主に広東地域で知られているものの、同一業界に従事している果然社は、当該商標及びその商品を知らないはずがないにもかかわらず、依然として「益力多」に類似する「益菌多」を自社の商業標識として自社が生産する同類商品に使用していた行為には、明らかに商標の知名度に対するただ乗りの主観的な故意がある。それゆえ、一審裁判所は、果然社が自社製品に標識「益菌多」を使用した行為は権利者の登録商標権侵害に対する侵害を構成すると認定した。
なお、審査を経て、「養楽多」商品の包装・装飾は、知名商品の特有包装・装飾に該当し、かつ、両者の5本パックの包装・装飾間の対比によれば、果然社の製品の5本パックの包装・装飾にも「養楽多」商品と同一の元素を採用したが、当該包装・装飾は類似し、果然社が無断で知名商品の特有包装・装飾を使用した行為は、不正競争行為を構成する。
一審裁判所は、果然社に対し、直ちにヤクルト本社の登録商標専用権を侵害する行為を停止し、直ちに「益力多」及び「養楽多」商品に係る知名商品の特有包装・装飾に類似する5本パックの包装・装飾の使用を停止し、ヤクルト本社の経済損失及び合理的な費用70万元を賠償することを命じた。また、楽客瑪社に対しては、直ちに果然社が生産した発酵乳飲料「益菌多」の販売行為を停止することを命じた。
果然社は、一審判決を不服とし、上訴を提起した。
上海知識産権裁判所は、審理を経て、被疑侵害製品は権利者の立体商標に類似し、全体の包装・装飾も権利者の商品に類似し、侵害製品の外包装の細微な相違点は、関連公衆にもたらす混同を防ぐことができないので、果然社の行為が権利者の登録商標専用権に対する侵害と不正競争を構成すると認定し、原判決を維持する判決を言い渡した。