2017-08-15

EU:アルファベット「D」商標は誰のもの - Novagraaf

欧州連合の一般裁判所は、イタリアのアパレルメーカー、ディーゼル(Diesel)が1999年EUTM(欧州連合商標)に登録したスタイライズした「D」に関する商標紛争の判決を下した。控訴審で裁判所は、後願商標「D」と混同の虞についてディーゼルを支持した。

「D」対「D」
ディーゼルは、2012年に衣料品ブランドSprinter megacentros del deporte SL(Sprinter)の出願商標(下図参照)が、大文字「D」をスタイライズした自社の登録商標(下図参照)に類似していることを理由に異議を申立てた。2つの商標は、共に衣服(クラス25)と皮革製品とかばん類(クラス18)を指定していた。

異議は、2014年に欧州連合知的財産庁(EUIPO)によって棄却され、その決定は2015年に異議部によって支持された。異議部の見解は以下のようなものであった。

  • 登録商標は明確に大文字「D」を表しているが、出願商標は単純な幾何学的形態である。
  • したがって、関連する公衆のごく一部が出願商標を文字「D」と認識することは否定できないものの、関連する公衆の多くが文字「D」として認識するとは考えにくい。
  • 外観的には、類似点よりは異なる点がはるかに大きい。
  • 称呼的および観念的な類似性は、大文字「D」と認識する公衆のごく一部に対してのみ存在する。関連する公衆の多くは、称呼的および観念的な類似性を認識しない。
  • 登録商標の識別力は、指定商品については弱いものとみなされる。

しかし、EUの一般裁判所は、2017年7月20日の判決において、これらの主張を認めなかった。最も重要なことは、出願商標には関連する公衆が大文字「D」とみなすために必要なすべての特徴が含まれていると、裁判所が判断したことだ。また、EUIPO異議部は、出願商標によってどんな単純な幾何学的形状が表されているかを明確にしなかったとも判じた。

EUの一般裁判所は、商標は外観的な見地から両商標は類似すると主張した:両商標には同様のダイナミズムと全体的なバランスがあり、線の幅も内角の形も似ている。関連する公衆は非常に注意深いというわけではないので、当該商品が一般消費財であることも考慮されなければならない。一般的に、ファッション製品に付す商標のサイズは、商品全体と比較するとかなり小さいと考えられている。そのため、「消費者はこれらの商標を区別するための小さなスタイリスティックな違いを捉えられない可能性を排除することはできない。」と結論づけた。

裁判所による判断の論理的帰結は、出願商標がディーゼルの登録商標と称呼的かつ観念的に同一であるというものだ。指定商品も同一であるため、裁判所は、登録商標の識別力が低い場合であっても、商標間に混同の虞が生じると結論づけた。

本文は こちら (Trademarking the alphabet: D is for Diesel)