2017-08-25

EU:拒絶理由を克服した商標「&PIZZA」 - Novagraaf

2016年に、米国の企業は、文字・図形商標「&PIZZA」をEUIPO(欧州連合知的財産庁)に出願した。出願商標は、レストラン、バー、ケータリングのサービスと食品、飲料の商品を指定していた。EUIPOは、「ピザ」という言葉の記述的性質から識別力がないとして、商標の登録を部分的に拒絶した。しかし、出願人は指定する商品とサービスに制限をかけることで拒絶理由を克服することができた。NovagraafのFrouke Hekkerが解説する。

商標として登録するためには、ブランド名やロゴが特定の基準を満たす必要がある。特に、関連する公衆が自他商品を識別することができる「識別力」を持たなければならない。もし出願商標がこれらの要件を満たしていない場合、出願商標は登録を拒絶されるか、商標権が付与されている場合は、申立てにより潜在的に取り消される可能性があることになる。保護を求めている文字要素(要部)が、単に商品やサービスを説明するものであれば、識別力の要件は満たさない。したがって、識別性を評価するには、その標章が指定する商品およびサービスを考慮する必要がある。

ピザではない「&PIZZA」
当初、「&PIZZA」標章は、チーズソース、トマトソース、パスタソース、バジルソース、ピザ生地とレストランおよびバーサービスを含む商品役務区分の30類、32類および43類の様々な商品およびサービスを指定していた。これらの商品・サービスに関して、EUIPOの審査官は、「&PIZZA」標章が商標として適していないと判断した。「ピザ」という言葉は、EU全域の消費者に「生地の上にトマトソースを薄く塗り、チーズとアンチョビ、ソーセージ、ハムなどを乗せて窯やオーブンで焼いたもの」と考えられている。また、「「&PIZZA」という文字は、ピザ自体に適用する商品・サービス、ピザの提供に関連するレストラン、バー、ケータリングサービスで使用するためのソースや生地を含む商品であると説明するまでもなく、消費者にすぐに伝わる」と、審査官は付け加えた。

また、アンパサンド(&)には、一般的で標準フォントが使用されているため、当該文字/図形標章の図形要素も識別力がないと考えられた。

…だが、ソフトドリンクとお菓子は別
この出願商標は、茶、コーヒー、サラダドレッシング、菓子、フルーツジュース、シロップ、アイスクリーム、ボトル飲料水、炭酸水、ソフトドリンクなど、食品のピザに関係のない様々な商品の保護も求めていた。識別性の観点からも、出願商標の「ピザ」という文字は、それらの商品を単に説明するものではないので識別力の要件に満たしているとして、これらの商品に対しては商標登録を拒絶されなかった。この判断が示された後、商標出願人は問題となる商品を限定する申請を行った。

NovagraafのNora Fowlerは次のようにコメントしている。
商品やサービス用に新しい商標を選択するときは、できるだけ識別力のある標識(文字やロゴ)を選んだ方が良い(つまり、単なる商品やサービスの説明ではなく、商品やサービスの特徴でもないもの)。それにより、出願段階で識別性の問題を回避できるだけでなく、顧客が商品/サービスと標識を排他的に関連付けることができ、単なる商品やサービスの説明であると想定しなくなる。また、将来的には第三者による模倣を防ぎ商標の保護も容易となる。

また、「獲得した識別力」に基づいて、識別力がないとする異議を登録官が棄却することもできる。そのためには、識別力のない標章をマーケットで大々的に使用した結果、関連する公衆が、当該標章をその商品・サービスの特定の所有者(商標出願人)に由来するという認識に至ったという、大量の証拠を提出する必要がある。

記述的な商標を選択した場合、出願商標に追加的な独特な要素を含めることもできるが、商標の識別力の小さい部分に関する権利は比較的限定的なものとなる。また、識別力のない要素が識別力を獲得したことを示す証拠を積み上げている間は、一種の「名もなきもの(place holder)」となるかもしれないが、一旦、識別力のない要素がマーケットで識別力を獲得したら、その要素だけを商標出願するのもよいかもしれない。

本文は こちら (&PIZZA not suitable as a trademark for… pizza)