従来からタイの知的財産権と反競争法及び反競争政策との関係は複雑であったが、排他的な知的財産権は、創造と技術を通して競争を活性化するものと考えられている。
2017年7月7日、第2次取引競争法(TCA: Trade Competition Act B.E. 2560 (2017))が官報に掲載された。第1次取引競争法(B.E. 2542 (1999))に代わるものとして2017年10月5日に発効する。改正法は、旧法に託された独占禁止と競争の法原則に対して、より大きな実効性を伴っている。
1999年の旧法制定以来、取引競争委員会(以下「委員会」)の成果にはがっかりさせられるもので、提起された約80件の問題のうち、起訴されたものは1件だけで、殆どの案件は裁判所まで来ることはなかった。
改正法の下で違法とみなされる主な行為は;
- 市場支配力の濫用(abuse of market dominance)
- 合併と特定の買収形態(mergers and certain forms of acquisition)
- 市場における競争を支配する談合およびその他の共同行為(collusion and other collective practices that restrain competition in the market)
- 委員会が不公正取引慣行とみなす行為(activities considered by the Trade Competition Commission as unfair trade practices)
このような違法行為に関与すると、1年以上、3年以下の懲役、または10万バーツ(約3,000米ドル)以上、100万バーツ(約3万米ドル)以下の罰金、またはその両方が科せられる。改正法は、タイで事業を行うすべての企業および個人に適用される。
旧法と同様に、改正法でも反競争政策と知的財産権との関係が明確になっていない。反競争ライセンスを無効にする知的財産法の条項を行使することができるが、様々な条項を継ぎ合わせるだけでは選択肢が限定される。(例えば、契約無効が唯一の罰則となるような状況で、市場支配力の濫用にうまく適用できない)。これらの規定は独占禁止法の規定としては十分なものとはいえない。
それにもかかわらず、改正法は定義セクションで興味深いガイドラインを示している。第5節で、市場支配力の決定は、「競争条件に影響を及ぼす要因」を考慮しなければならず、さらに、「生産に必要な要素へのアクセス」を含むものと定義されている。「生産の要素」には知的財産も含まれ、その「アクセス」は知的財産の排他的権利によっても制限されるという論理は、非合理的とはいえない。この考え方は、知的財産権の強さが関連市場における競争条件に潜在的な影響を及ぼす可能性がある要因の1つであることを示唆しているため、ある状況においての市場優位性を事業者に与えると共に、改正法の枠内で知的財産権者にもそれを与えている。
さらに、改正法の独占的行為の防止と不公平競争の防止に関する条項は、委員会に法的拘束力のある権限をより広範に与えている。まだ判例はないが、タイの知的財産権にも重要な影響を及ぼす可能性が高い。
本文は こちら (Thailand’s New Trade Competition Act: Intellectual Property Implications)