1993年12月1日に中国で初の《反不正当競争法(不正競争防止法)》の正式な施行から24年後の2017年11月4日、中国全国人民代表大会常務委員会において改正《反不正当競争法》が可決された。改正後の反不正当競争法は、2018年1月1日から施行される。
今回の改正《反不正当競争法》では過去十数年間の反不正当競争分野での法律適用の実りある成果を反映してこれを法律化しており、特に知的財産権に係る条項は、改正後、体裁がより明晰で、構成もよりいっそう合理的となり、文言もより緻密で、不備欠陥が可能な限り解消されており、これらがいずれも今回の改正の特色を浮き彫りにしているところである。今回の《反不正当競争法》における知的財産権に係る条項の内容について以下に評論分析していく。
一.《反不正当競争法》第2条第2項「信義誠実」の原則
改正《反不正当競争法》第2条第2項では、「この法律において、不正競争行為とは、経営者が生産経営活動において、本法の規定に違反し、市場の競争秩序を乱し、その他経営者又は消費者の合法的な権益を損なう行為をいう。」と規定されている。
改正《反不正当競争法》第12条では、インターネット分野に関する典型的な不正競争の形態として次の4つの形態がつくり出された。(1)その他経営者の同意を経ずして、その適法に提供するネットワーク製品又はサービスにおいて、リンクを張り、リンク先に強制的にジャンプさせる、(2)ユーザーを誤った方向に導き、欺き、強迫して、その他経営者の適法に提供するネットワーク製品又はサービスを修正、停止、アンインストールさせる、(3)その他経営者が適法に提供するネットワーク製品又はサービスに対して悪意をもって互換性を持たせない、(4)その他経営者の適法に提供するネットワーク製品又はサービスの正常な運営を妨害、破壊するその他の行為、である。これにより、改正《反不正当競争法》が正式に施行された後、インターネットに係る不正競争事件には改正《反不正当競争法》第2条第2項を適用せずに、第12条を直接引用すればよくなる。
二.《反不正当競争法》第6条、標章の保護
1.《反不正当競争法》第6条は、標章に対する保護であり、当然この標章とは商標との対比において、より上位かつ広範な概念である。改正《反不正当競争法》では、1993年《反不正当競争法》の第5条第(一)号が削除された。同条は「他人の登録商標を模倣すること」であるが、事実上「他人の登録商標の模倣」は《商標法》の管轄範疇にあるはずで、事実上、法律の実務において同条項を引用した裁定事例が過去にほとんどないため、今回の改正で同条項を削除したことは時宜に適っている。
2.改正《反不正当競争法》第6条第(一)号は1993年《反不正当競争法》第5条第(二)号における「知名商品(周知商品に相当――訳注)の特有の名称、包装、装飾」が、「一定の影響を有する商品の名称、包装、装飾」に修正され、文言上の変化は大きくないとは言えないが、事実上その本質に変化はない。「知名商品の特有の名称、包装、装飾」をどのように認定するかについては、2007年の最高人民法院の《不正競争民事事件の審理における法律応用の若干問題に関する解釈》の第1条から第5条ですでに十分明確な規定がなされており、改正《反不正当競争法》が正式に施行された後、上述の司法解釈で確立された審査基準が引き続き適用される。
3.改正《反不正当競争法》第6条第(一)号の最大の変化は、文言に「等」の字が追加されたことである。これは、今後において法律の改正を経ずとも《反不正当競争法》を将来の新たな社会経済形態に対して同様に適応させていくことが可能となるということでもある。
4.改正《反不正当競争法》第6条第(二)号は、企業名称の保護に関する条項で、企業名称の保護を略称、屋号などにまで細分化している。《反不正当競争法》による企業名称の保護を機械的、教条的に理解、適用してはならず、企業名称の略称も不正競争の形態の1つであって、《反不正当競争法》の規制の範疇に組み込むべきであるとする見方が取り入れられたことは明らかである。また、企業名称の保護に関して「一定の影響を有する」という文言が追加されたが、当該外国企業名称がすでに中華人民共和国の境界内において、使用により一定の影響を有していることが前提となる。
5.改正《反不正当競争法》第6条第(二)号にある「社会組織名称(略称を含む)」、姓名(筆名、芸名、訳名を含む)などは、明らかに「商品化権」の範疇に属する。今回の改正《反不正当競争法》第6条第(二)号ではこれに対して明確に規定されており、今後、商品化権の保護に同条項を直接適用できることは明白であり、これは文化創造に大きく依存する産業経営者にとって、非常に大きな福音となるであろう。
6.改正《反不正当競争法》第6条第(三)号における「ドメインの主体部分」に対する保護は、実際には、2001年の最高人民法院の「コンピュータネットワークのドメインに係る民事紛争事件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈」において、ドメインをどのように保護するかについてすでに明確な規定が行われている。
7.改正《反不正当競争法》第6条第(四)号は、明らかにキャッチオール条項であり、第6条第(一)号から第(三)号の適用はできないが、誤認を引き起こし得る混同行為について、同条項で処理することができる。
三.《反不正当競争法》第8条、虚偽宣伝
改正《反不正当競争法》第8条に対応するのは1993年《反不正当競争法》第9条で、「虚偽宣伝」条項と称することができるが、今回の改正で条文の文言がよりいっそう緻密になった。1993年《反不正当競争法》では、「人の誤解をまねく虚偽宣伝を禁止する」と規定されていたが、今回の改正でこれを「虚假或引人誤解的商業宣伝」に改正し、文字通り、「虚偽の商業宣伝」を禁止すべきで、「人の誤解をまねく商業宣伝」も禁止すべきであるとされた。なお、人の誤解をまねく商業宣伝とは、必ずしも「虚偽」でなければならないということはなく、真実の商業宣伝であっても、「人の誤解をまねく」に足るものは同様に禁止すべきであるとされた点に注意が必要である。
四.《反不正当競争法》第9条、営業秘密の保護
改正《反不正当競争法》第9条は「営業秘密」の保護に関する条項で、対応するのは1993年《反不正当競争法》第10条である。営業秘密の保護が直面する困難は、法律の規定そのものの問題ではなく、現行規定をいかに効果的に行使するかという問題である。当然、営業秘密をより良く保護するという観点からは、営業秘密を特に対象として立法を進め、1つの独立した部門法とすることができるならば、営業秘密の保護にとって大変有益であろう。