2018-02-13

中国:続_馳名商標YKK異議不服審判行政再審事件(事件考察) - CCPIT

中国馳名商標YKK異議不服審判行政再審事件に関する考察―商品関連性,法律適用基準の一致性,需要によって認定する原則を中心に(Feb 1, 2018 By 胡剛, 董暁萌, 甘夢然)

再審判決に関する3つのハイライト
YKK事件再審判決書には,注目していただきたいハイライトは次の 3 つがある。
1. 最高裁は,「乗物用内装飾品」と「ファスナー」とは上下流商品の関係があるため,商品関連性が強いと認めた。
2. 最高裁は,先に下された二審判決2部を引用し,法律の適用基準の一致性原則に基づき,YKK馳名商標に区分を跨ぐふさわしい保護を与えた。
3. 再審申請人は自ら,訴訟請求を,被異議商標が「自動車」と「乗物用内装飾品」との 2商品,或いは少なくとも「乗物用内装飾品」における登録が許可されるべきではないことに限定した。こうすると,最高裁は,対象商品2個に対して馳名商標保護を与えることが「需要によって認定する」原則にふさわしいかどうかということに焦点を絞って考慮することができるようになった。

   本事件において,馳名商標YKKの指定商品「ファスナー」は,一般大衆が日常生活中に直接購入できるものではなく,かつ一般大衆にそのブランドに高く注目されるものでもない。「ファスナー」は専門商品として,本件のYKK馳名商標は専門商品における馳名商標と思われる。YKK馳名商標の保護に関し,商品の関連要素に重点を置おいて考慮すべきであり,「乗物用内装飾品」と「ファスナー」との上下流商品の関連関係に基づき,最高裁は「乗物用内装飾品」という関連商品においてYKK馳名商標に保護を与えたのである。

区分を跨ぐ馳名商標の保護に関する最新の司法解釈
2017年3月1日より,「商標の権利付与・権利確定にかかわる行政事件審理の若干問題に関する最高裁の規定」)(以下,「規定」と略称する)は正式に施行した。「規定」の第13条によると,登録済み馳名商標の保護範囲について,総合的に以下の要素を考慮すべきである。
⦁ 引用商標の顕著性と知名度
⦁ 商標標章が十分に類似しているか
⦁ 指定される使用商品の状況
⦁ 関連公衆の重合度と注目度
⦁ 引用商標に類似した標章がその他の市場主体により合法的に使用される情況やその他関連要素

これより前,「馳名商標保護に関わる民事紛争事件の審理における法律適用の若干問題に関する最高裁の解釈」(法釈(2009)3号)の第10条では,馳名商標の保護について,総合的に以下の要素を考慮すべきと規定した。
⦁ 当該馳名商標の顕著性の程度
⦁ 当該馳名商標の被異議商標或いは企業名称を使用する商品の関連公衆における認知程度
⦁ 馳名商標を使用する商品と被異議商標或いは企業名称を使用する商品間の関連程度
⦁ その他の関連要素

     実際には,「規定」における馳名商標の保護について考慮すべき5つの要素と法釈(2009)3号第10条の4つの要素は,内容が同じであるが,両者の違いとして,「規定」は法釈(2009)3号第10条の内容をよりよく充実させたものである。以下のように分析する。
⦁ 「 規定」における「引用商標の顕著性」と法釈(2009)3号第10条第1項における「馳名商標の顕著性の程度」に関する規定は基本的に同じである。
⦁ 「 規定」における「指定される使用商品の状況」は,法釈(2009)3号第10条第3項「商品間の関連程度」を含むが,その範囲は「商品間の関連程度」より広い。例えば,馳名商標の商品は専門商品と大衆消費品のどちらか,また,商品の性質,価格,使用頻度なども考慮すべき要因になる。
⦁ 「 規定」における「関連公衆の重合度及び注目度」は法釈(2009)3号第10条第2項「認知程度」の重要な参考要素である。公衆の重合度は高ければ高いほど,一般的に馳名商標は被異議商標の関連公衆における認知程度も高くなる。
⦁ 「 規定」における「引用商標に類似した標章がその他市場主体により合法的に使用される情況やその他関連要素」は,法釈(2009)3号第10条第4項「その他の関連要素」に対する詳しい解釈である。
⦁ 「 規定」における「引用商標の知名度」及び「商標標識は十分に類似しているか」は,『商標法』第13条第3項にあるはずの意味である。

登録済み馳名商標の事件において,馳名商標にどの程度の保護を与えるかについては,正確な判断を行うために,司法解釈の各要素を総合的に考慮する必要がある。

大衆商品における馳名商標の保護
大衆商品に使用される馳名商標は,社会の一般公衆に知られる程度が高いため,もし当該馳名商標と類似する被異議商標が一般大衆用品,或いは他の専門商品に登録できると,被異議商標の関連公衆が先行の馳名商標を既に知っていることから,馳名商標の希釈化,或いは馳名商標の名誉は不正に利用されるという結果になってしまう。
 大衆商品における馳名商標に対して保護を与えるかどうかを決めるときは,関連公衆の重合度をメインとして,さらに司法解釈の他の要素もあわせて考慮して良い。両商標の関連公衆は重合度が高い,または被異議商標の関連公衆は馳名商標の関連公衆に含まれる場合は,被異議商標の関連公衆は,被異議商標が付いた指定商品が馳名商標の所有者より提供されるものであり,或いは馳名商標の所有者となんらかの関連があると勘違いしてしまい,または被異議商標の関連公衆が馳名商標と指定商品との間の唯一の対応関係に対する認知が乱されてしまうことになり,馳名商標の名誉が不正に利用され,又は馳名商標が希釈化されるという結果を招くと基本的に判断して良い。

専門商品における馳名商標の保護
専門商品に使用される馳名商標は,社会の一般大衆に知られる程度が低いため,当該馳名商標と類似する被異議商標が一般大衆用品,或いは他の関連性のない専門商品に登録できると,被異議商標の関連公衆が先行の馳名商標の存在を知らない可能性があるため,馳名商標の希釈化,或いは馳名商標の名誉は不正に利用されるという結果にならない 。
 専門商品における馳名商標に対して保護を与えるかどうかを決めるときは,商品の関連要素をメインとして,さらに司法解釈の他の要素もあわせて考慮して良い。関連商品において被異議商標の登録は許可されると,被異議商標の関連公衆は,被異議商標を付いた指定商品が馳名商標の所有者より提供されるものであり,或いは馳名商標の所有者となんらかの関連があると勘違いしてしまい,馳名商標の名誉が不正に利用されるという結果を招くと基本的に判断して良い。

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