2018-05-13

日本:新聞報道「そっくりドレス」事件 - 工藤莞司弁理士

=商品形態模倣行為(不正競争防止法213号)事案か=

先日新聞に、「そっくりドレス 賠償命令」の記事が出た(2018.4.27読売新聞)。婦人服の形態デザインを巡る争いで、東京地裁が、訴えた衣料品メーカー原告X社に1億4000万の損害を認め、被告Y社にその支払いを命じる判決を下したとする内容である。この種事件では、高額な賠償額である。

 ところが、肝心の争いになった根拠の知的財産権の種類や法律の記載がない。この種争いでは、意匠権、立体商標に係る商標権、そして不正競争防止法(「不競法」と略)も考えられる。不競法なら、周知表示混同惹起行為(同法2条1項1号)又は商品形態模倣行為(同法2条1項3号)がある。洋服形態デザインを巡る争いは少なく、過去には、不競法2条1項1号事件としては、「三宅一生デザインプリーツ・プリーツ事件」(11.6.29判決 東京地7(ワ)13557 判時1693-139)がある。また、2条1項3号事件では、「長袖カーディガン等形態模倣事件」(19.07.17判決 東京地18(ワ)3772 速報388-14526 控訴審20.01.17判決 知財高19(ネ)10063 速報394-14851)や「ブラウス形態模倣事件」(29.01.19判決 大阪地27(ワ)9648/10930 速報507-20890)がある。

 記事をよく見ると、原告X社が自己のドレスに被告商品は「酷似している」と主張し、これに被告Y社が「ありふれた類似商品に過ぎない」と反論し、判決は、「実質的に同一で、被告は故意に模倣した」とある。
 そうすると、商品形態模倣行為が有力となる。他人の開発した商品形態をそっくり模倣した商品(Dead copy)の販売等を不正競争行為として禁止するもので、要件としては、他人の商品の模倣と形態が実質的同一の場合だからである。
 最近、意匠権や商品形態に周知性がなくとも、先に独自に開発し市場へ出した商品形態については、販売から3年間は他人の模倣を禁止し得るため、この不正競争行為を巡る争いは多く、原告側勝訴判決も少なくないが、本件ほど高額な賠償額の認定は珍しいと思う。
 5月に入っても、未だ判決文の公開はないようだが、どんな損害額の計算で、高額な額が算定されたのか、注目される。