最近、韓国大法院の全員合議体は、「AMERICAN UNIVERSITY」が顕著な地理的名称のみで構成された標章に該当せず識別力が認められるという原審判決を支持した(大法院2018.6.21.言渡し2015フ1454判決)。
事実関係
韓国の商標法では、「顕著な地理的名称のみからなる標章」は識別力がなく登録を受けることができないという規定(*1)を設けている。本件商標「AMERICAN UNIVERSITY」(指定サービス業:大学教育業、教授業)に対し、アメリカを指し示す顕著な地理的名称である「AMERICAN」と指定サービス業の提供主体または、業種を表示する「UNIVERSITY」が単純に結びついたもので、同規定に該当するのかが問題になった事案である。
法院の判断
これに対し大法院は、
①
本件商標出願人が運営する大学(以下「本件大学」とする)はアメリカ合衆国のワシントンD.C.に位置する総合大学で、1893年に設立されて以来120年以上、「AMERICAN UNIVERSITY」を校名として使用している点
②
本件大学の在学生数は1万人余りに達し、韓国人の学生も2008~2009年に123人が入学したのを始め、毎年着実に入学しており、本件大学は韓国所在の大学と海外研修プログラム及び複数学位制度を運営している点
③
インターネットポータルサイトのネイバー(www.naver.com)で、本件商標を検索すると、ブログは59,761件、コミュニティは22,770件の検索結果が表示され、大部分が本件大学と関連した内容で海外留学などに関心がある人々が本件大学の情報を得るために頻繁に検索していることが分かる点
これらに照らしてみる時、本件商標は指定サービス業である大学教育業、教授業と関連してアメリカへの留学を準備している需要者に本件大学の名称として相当知られていると見ることができると判断した。これに対し本件商標は、「AMERICAN」と「UNIVERSITY」が結合して全体として新しい観念を形成しており、さらに指定サービス業である大学教育業、教授業と関連して新しい識別力を形成しているので、同法第33条第1項第4号1に該当しないと判断した。
コメント
大法院で本件商標に対して本件大学の沿革、学生数、大学施設、国内外での知名度、すなわち需要者の認識程度を考慮して使用による識別力でない「商標構成自体の本質的な識別力」を認めた点で意味がある。
本判決は既存の「ソウル大学校判例」(大法院2015.1.29.言渡し2014フ2283判決)で顕著な地理的名称である「ソウル」と「大学校」が結合して単純に「ソウルにある大学校」ではない「ソウル市の冠岳区に所在する国立総合大学校」という新しい観念を形成していることを挙げ、識別力を認めた大法院の判断とその軌を一にし、これに加えて海外に所在する大学であるとしても需要者の認識程度を考慮して識別力が認められると判断した点で顕著な地理的名称に関連した識別力の認定範囲を広げたと判断される。
参考までに、本判決の別の意見として同法第33条第1項第4号は標章の構成自体による「本質的な識別力」を扱う規定であるにもかかわらず、「使用による識別力」判断基準を混合して適用した点で矛盾するという指摘もあった。
(弁理士 徐蓮珠)
*1 商標法第33条第1項第4号
第33条(商標登録の要件)
①次の各号のいずれかに該当する商標を除き、商標登録を受けることができる。
4.顕著な地理的名称若しくはその略語又は地図のみからなる商標