2018-10-22

日本:注目裁判例、「関西国際学友会」 不使用取消事件- 工藤莞司弁理士

不使用取消審判において、登録商標「関西国際学友会」と使用商標「旧 関西国際学友会日本語学校」とには同一性があると認められた事例(知財高裁平成30年8月23日 平成30年(行ケ)第10037号 審決取消請求事件)

事案の概要 請求人(原告)は、被請求人(被告)が有する「関西国際学友会」の文字からなり、第41類に属する役務を指定する商標登録(登録第4829390号、本件商標)に対して、指定役務中の一部「国際交流を目的とした教育研修・講座の企画又は運営等」について不使用取消審判(取消2016-300635)を請求した処、特許庁は、被請求人が証明した使用商標「旧 関西国際学友会日本語学校」とに同一性を認めて、不成立の審決をしたため、知財高裁に対して、審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した事案である。

判旨 使用商標の各語が有する意味合いに鑑みると、「関西国際学友会日本語学校」は「関西国際学友会」が運営する「日本語学校」といった程度の意味を有する語として理解される。そして、「関西国際学友会」と「日本語学校」とは、一体不可分の関係にあるとは言い難い上に、「日本語学校」は日本語を教授する教育機関又は施設を意味する一般的名称であるから、需要者は、使用商標中の「関西国際学友会」の部分が出所を示す機能を果たしていると認識するというべきである。そうすると,使用商標の出所表示機能を発揮する「関西国際学友会」は本件商標と同一で、本件商標と使用商標は社会通念上同一の商標と認められる。
また、商標的使用についても、需要者は、本件ウェブサイト等に記載されている役務が、その旧称を「関西国際学友会日本語学校」とする主体によって提供されるものと認識するといえるから、使用商標は出所表示機能を発揮する態様で使用されていると肯定した。

解説 本件判決は、使用商標の出所を示す機能を果たす部分(要部)と登録商標が同一として、登録商標の使用を認めたものである。最近では、珍しい裁判例であるが、審決が要部の語を用いて認めたものを積極的に支持したものである。
出所表示性や識別性からの要部における同一性については、現行50条 1 項括弧書きでは、「その他当該登録商標と社会通念上と認められる商標」に含まれるのであろうが、読み難い(改正時の解説の参考例にも見当たらない(特許庁編「平成8年改正工業所有権法の解説」)135頁。)。
パリ条約5条C(2)は、「商標の識別性に影響を与えることなくその商標を使用する場合には」登録の効力は失われないと規定し、単なる書体や字体の変更に加えて、独立して出所表示機能を有する、いわゆる要部における同一性をも許容している。登録商標に、他の語等の付加や結合した使用商標でも、要部において同一であれば、同じ出所表示機能を果たすから、同一性があるものである。例えば、商標「SONY」とテレビに使用する商標「SONY TV.」や「SUPERSONY」とは同一の機能を果たすというものである。この場合は、使用商標の出所表示機能を果たす部分がいずれにあるかを認定し、それが登録商標と同一の出所表示機能を果たすか否かを判断すべきなのである。
本件判決も、同旨で使用を認めたもので、パリ条約の規定に沿った認定、判断で、全体における称呼及び観念のみからの認定では、このような判断は出て来ない。積極的に出所表示機能を果たす部分、すなわち要部を認定したときは、その称呼、観念上からも同じ結論が得られる。