2019-01-22

日本:注目裁判例、「タンクドレス形態事件」 - 工藤莞司弁理士

婦人服の形態について、不正競争防止法2条1項3号の商品形態模倣行為に該当するとして、保護された事例(「タンクドレス形態事件」平成30年4月26日 東京地裁平成27年(ワ)第36405号)

事案の概要 本件は、婦人服を製造販売する原告が、婦人服の販売等をしている被告会社に対し、原告の商品婦人服の形態を模倣して婦人服の販売等をしたもので、不正競争防止法2条1項3号に当たるとして、損害賠償等を求めた事案である。

判旨 原告商品1(右図・ブラック)と被告商品1(左図・ノーブルブラック)については、証拠等によれば、両者は、基本的形態として「ストレート・シルエット」の「8分袖のワンピース」であり、袖口と襟口に幅広のビーズ刺繍が施 されている点、ビーズのデザイン、襟口については、少し立ち上がり、横方向に広めに開きがある点で共通しており、全体的な印象としても酷似しているといえる。したがって、両者の形態は実質的に同一である。被告らは、ビーズ刺繍の幅や配置の違い、さらに、被告らは、襟を留める部分やショルダーラインの違いについても主張するが、上記の共通点に埋没する程度の違いである。以下同様に、原告商品2-7と被告商品2-7についても、形態は実質的に同一と認定した。

「色違い」 婦人服における色彩の相違は、それが顕著に異なる印象を与えるようなものである場合はともかく、そうでない限り、一般には、形態の実質的同一性の判断に強い影響を与えないというべきである。色彩の類似性に加えて先に検討した形態(色彩を除く。)の共通性により、何ら問題なく形態全体の実質的同一性が認められる。

「依拠」 被告会社は、元になる原告商品1ないし7を第三者(中国の会社や日本の SKM社)に持ち込むなどし、そのままとすること又はデザインや色彩を若干変更することを指示し、その指示どおり製造された被告商品1ないし7を輸入するなどした上で、これらを日本国内で販売したものと認められるから、被告会社は、原告商品1ないし7に依拠して被告商品1ないし7を製造し、これらを販売したものと認められる。

解説 婦人服の形態が、不正競争防止法2条1項3号の商品形態模倣行為に該当するとして、原告の被告に対する損害賠償請求が認められたもので、中国からの輸入品である。被服の形態的デザインも保護の対象となり、裁判例はあるが保護が認められる例は少ない。
2条1項3号は、他人が資本や労力を投下して開発した商品のデッドコピーを禁止するもので、該当要件としては、形態の実質的同一性及び模倣である。そして、国内販売開始の日から3年間の保護とされている(不正競争防止法19条1項5号イ)。
同一性については、裁判所は、原被告商品を丁寧に比較して認定し、基本的な形態の共通性等から実質的同一性を認定している。そして、模倣については、先行原告商品に依拠したもので、被告の指示によると認定している。
 注目されるのは、原被告商品の色違いで、裁判所は、『婦人服において、形状が同じで色彩だけ異なるいわゆる「色違い」の商品が広く存在していることは公知の事実で、婦人服の需要者も、当然に、形状が同じで色彩だけが違う婦人服が存在することを認識しているし、また、婦人服の形態の開発において資金・労力を投下する主な対象は色彩以外の点である。』として、同一性の認定には影響を与えないとした。婦人服については、妥当であろう。