2019-03-05

日本:駅名「青海」と同「青梅」との類似性 - 工藤莞司弁理士

=商標の類似との異同=

 最近、ゆりかもめ線「青海駅」とJR青梅線「青梅駅」とを間違えて、前者へ行くつもりの乗客が後者に着いてしまった乗客が相次いでいるという(読売夕刊19.2.16)。新聞では、字面や読みが似ているのが理由と挙げている。確かに、一見そのようなことはありそうである。スマホやタブレットで、行く先を確認する際、小さな画面では起こりうると思われる。これに、”ながらスマホ”もある。「青梅」の方がより知られ印象にあるからであろう。青梅駅には注意書きが掲示されたという(右写真は前掲読売新聞より)。

 私は、仕事柄、商標の類似との異同について、考えてしまった。そこでは、外観、称呼及び観念上からの判断が確立している。「青海」と「青梅」については、外観的には、類似性はあろう。しかし、称呼上は僅か三音で前半の二音が相違し、観念は明らかに相違する。これらから総合判断すれば、類似とする結論は見付からない。

 しかし、現に駅名では間違う例が相次いでいるではないかと反論があろう。私の推測では、青海駅へ向かう乗客の殆どは間違いなく到着し、僅かな乗客の問題だろうと思う。そして、急いでいる中での、勘違いの例と思われる。商標の類似判断では、「・・・需要者の通常有する注意力を基準として判断・・」と審査基準にも、明記されている(「商標審査基準」4条1項11号1.(3))。勘違い迄は考慮されない。

 先ず、駅で路線図を眺め、乗車券を購入するという従前の方式では、考えられない間違いだが、スマホ時代故に生ずる例外的な事例かと思われる。
 商標が機能する商品や役務の取引においても、インターネットや通信販売方式が広がっており、従来通りの判断方式等だけでは不十分で、これらの取引の影響も考慮する必要はあろう。