2019-09-11

日本:注目裁判例、商標「EQ」について、使用による識別力の取得が認められた事例- 工藤莞司弁理士

注目裁判例
 商品「Motor vehicles.」(自動車及び二輪自動車)に使用する商標「EQ」について、使用による識別力の取得が認められた事例(「EQ事件」令和元年7月3日 知財高裁平成31年(行ケ)第10004号)

事案の概要
 原告(審判請求人・出願人)は、指定商品を12類「Motor vehicles.」(自動車及び二輪自動車)として、「EQ」の欧文字で表して成る商標(「本願商標」)について、国際商標登録出願をした(国際登録第1328469号、)処、 拒絶査定を受けたので、拒絶査定不服審判を請求(不服2018-650016)したが、 特許庁は不成立の審決をしたため、その取消しを求めて、知財高裁に提訴した事案である

判 旨
 一般に、欧文字2字からなる標章は、商品の品番、型番、等級等を示す記号、符号として用いられることがあるところ、本願の指定商品である自動車の関わる業界においても、欧文字2字が、商品の品番、型番、等級等を示す記号、符号として用いられることがある(証拠略)。そして本願商標は、自動車関連業界で商品の品番、型番、等級等を示す記号、符号として用いられる欧文字2字との比較において特段の差異があるとは認められない。よって、本願商標は、商標法3条1項5号に該当する。(略)
 本願商標については、著名な自動車メーカーである原告の発表する電動車やそのブランド名に注目する者を含む、自動車に関心を持つ取引者、需要者に対し、これが原告の新しい電動車ブランドであることを印象付ける形で、集中的に広告宣伝が行われたということができる。加えて、本願商標は、本件審決時までに、出願国である英国及び欧州にて登録され、国際登録出願に基づく領域指定国7か国にて保護が認容されており、世界的に周知されるに至っていたと認められることも勘案するなら、本願商標についての広告宣伝期間が、パリモーターショー2016で初めて公表された本件審決時までの約2年間と比較的短いことや、原告が平成29年から販売しているプラグインハイブリッド車の販売台数が多いとはいえないこと等の事情を考慮しても、本願商標は、原告の電動車ブランドを表す商標として、取引者、需要者に、本願商標から原告との関連を認識することができる程度に周知されていたものと認められる。

コメント 本件判決は、自動車等を指定商品とするアルファベット2文字からなる商標について、使用による識別力の取得を認めて、認めなかった審決を取り消したものである。自動車に関心を持つ取引者、需要者に対しこれが原告の新しい電動車ブランドであることを印象付ける形で集中的に広告宣伝が行われたとの認定は妥当としても、約2年間の短い使用期間や多いとはいえない販売台数に言及し、また、英国及び欧州で登録され7か国で保護が認められていることも、勘案しているが、前者は審決への配慮としても、後者の他国での登録は参考程度にすぎない。結論「本願商標から原告との関連を認識することができる程度に周知されていた」とは、3条2項と同旨と言えるだろうか。残念ながら、使用による識別力の取得の認定、判断としては、疑問なしとしない。