2020-01-13

日本:注目裁判例、立体商標の使用による識別力の獲得を認めた審決が支持された事例 - 工藤莞司弁理士

立体商標について、使用による識別力の獲得を認めた審決が支持された事例
(「立体商標ランプシェード無効請求」事件 令和元年11月26日 知財高裁令和元年(行ケ)第10086号)

事案の概要 請求人(原告)が、被請求人(被告)が有する商標登録(第5825191号・下掲図)に対して、商標法3条1項3号等違反として無効審判を請求した処、特許庁は、3条2項適用を認めて不成立審決をしたため、請求人が審決の取消しを求めて、知財高裁に提訴した事案である。

判 旨 認定事実を総合すると、ヘニングセンがデザインした本件商品の立体的形状は、被告による本件商品の販売が日本で開始された昭和51年当時、独自の特徴を有し、しかも、本件商品が上記販売開始後本件商標の登録出願日までの約40年間の長期間にわたり日本国内において継続して販売され、この間本件商品は、ヘニングセンがデザインした世界のロングセラー商品であり、そのデザインが優れていること及び本件商品は被告(「ルイスポールセン社」)が製造販売元であることを印象づけるような広告宣伝が継続して繰り返し行われた結果、本件商標の登録出願時までには、本件商品が日本国内の広範囲にわたる照明器具、インテリアの取引業者及び照明器具、インテリアに関心のある一般消費者の間で被告が製造販売するランプシェードとして広く知られるようになり、本件商品の立体的形状は、周知著名となり、自他商品識別力を獲得するに至ったものと認められる。そうすると、本件商標は、3条2項に該当するものと認められる。

解 説 本件事案では、本件商標について、3条2項適用の可否が争われて、知財高裁もこれを認めて審決を支持したもので、妥当な判断である。原被告間では、この前に侵害訴訟で争い、本件原告の使用が本件被告の本件商標権を侵害すると認められている(「立体商標ランプシェード事件」平成30年12月27日 東京地裁平成29年(ワ)第22543号)。侵害訴訟の中で、3条1項3号違反の権利行使制限の抗弁がなされたが3条2項適用が認められて斥けられ、侵害が成立している。
 本件原告は、直接本件商標登録について、無効審判を請求したが、こちらでも3条2項適用が是認されたものである。また本件事案では、4条1項7号違反についても争われ、被告が原告の製造に係る「照明用器具」の輸入差止め等を行う目的で本件商標の登録出願を行ったことは、社会的相当性を欠くものとはいえないとされた。