2020-08-03

日本:注目裁判例、商標「I ♥ JAPAN」 は商標法3条1項6号に該当するとされた事例- 工藤莞司

(令和2年6月17日 知財高裁令和元年(行ケ)第10164号「I ♥ JAPAN事件」)

事案の概要
 原告(出願人・審判請求人)は、下掲の構成からなる出願商標について、14類、16類、18類及び24類に係る各商品を指定商品とし登録出願をしたが拒絶査定を受けたので、拒絶査定不服審判(2018-16957)を請求した処、特許庁は、商標法3条1項6号該当として不成立の審決をしたため、その取消しを求めて、知財高裁へ提訴した事案である。

旨 前記(証拠等略)によると、本願商標は、「私は、日本が大好きです。」の意味合いとして容易に理解されるもので、日本においては、I ハート図形の横又は下に「地名」を結合した表示は、当該地名が表す場所に対する愛着の気持ち等を表す表示又は当該地名が表す場所の土産物などとして客の関心をひくための表示として、また、I ハート図形の横又は下に「JAPAN」を結合した表示は、日本又はスポーツの日本代表チームなど日本に応援の気持ちを表す表示として、被服を取り扱う事業者やステッカーを取り扱う事業者等の事業者によって使用されていることが認められるから、本願商標をその指定商品に使用した場合、取引者、需要者は、これを、日本に対する愛着の気持ちや日本に属するものに対する応援の気持ちを表現したものあるいは日本の土産物を示すものと認識するにすぎないと認められる。そうすると、本願商標は、自他商品の識別力を有さないというほかない。したがって、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であるから、商標法3条1項6号に該当することになる。

コメント 本願商標については、指定商品の外、ネット上の広範囲な使用例も考慮されて、「日本に対する愛着の気持ちや日本に属するものに対する応援の気持ちを表現したものあるいは日本の土産物を示すものと認識するにすぎないと認められる。」と認定、判断された珍しい事案である。商品の品質等には直接的に拘わらないため、3条1項6号該当とされたが、6号でも希有な例である。日本や日本産商品等の宣伝用に多用されて識別力がないということだが、審決は、「本願商標は、誰もがその使用を欲するものと判断するのが相当」と判断している。
 原告の主張によれば、同一商標が他の区分では登録例が数件あるようで、認定、判断が困難な事案を暗示しているが、本件判決が言及したように、出願毎に個別に判断されるもので、過去の登録例は参考でしかなく、止むを得ない。