モザンビークがバンジュール議定書に加盟したというニュースを受けて、フルーク・ヘッケルがアフリカ大陸における知的財産権の2つの地域登録制度について解説する。
アフリカ大陸における2つの地域登録制度とは、アフリカ広域知的財産権機関(ARIPO)とアフリカ知的財産機関(OAPI)である。
OAPI(アフリカ知的財産機関)
OAPIの登録制度に基づく商標出願は、17カ国(カメルーン、ガボン、ギニア、ギニアビサウ、コモロ連合、コンゴ共和国、コートジボワール、セネガル、チャド、トーゴ、ニジェール、ブルキナファソ、ベナン、マリ、モーリタニア、中央アフリカ、赤道ギニア)すべてを自動的にカバーする単一の権利を提供する。
これらの国はバンギ協定加盟国であり、登録商標保護のために国内出願は出来ない。この点で、OAPIはBOIP(ベネルクス知的財産庁)におけるベネルクス商標制度に似たものだ。
また、2014年12月にOAPIはマドリッドプロトコルに加盟し、国際登録出願(IR)でOAPIを指定することが可能となった。しかし、OAPIのマドプロ加盟がまだ国内で法制化されずに制度が定める期限を遵守できていない国もあるため、OAPIを指定したIRの強制力には疑問が残る。したがって、現状ではIRでOAPIを指定するのではなく、OAPIへの直接出願を推奨する。
ARIPO(アフリカ広域知的財産権機関)
それに対して、ARIPOはマドリッド制度と同様に共通の行政制度を提供するものでありながら、加盟各国は国内制度に従って出願を審査するもので、一回の出願で指定した加盟国の登録を一括して取得することができる。
ARIPOは1997年3月に設立され、19カ国(ボツワナ、ガンビア、ガーナ、ケニア、レソト、リベリア、マラウイ、モザンビーク、ナミビア、ルワンダ、サントメ・プリンシペ、シエラレオネ、ソマリア、スーダン、エスワティニ(旧スワジランド)、ウガンダ、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ)が加盟している。現在ARIPO が管理している知的財産権の保護に関する4つの議定書は以下のとおり;
* 特許と工業意匠に関するハラレ議定書
* 伝統的知識の保護に関するスワコプムント議定書
* 植物新品種の保護に関するアルーシャ議定書
* 商標に関するバンジュール議定書
但し、すべてのARIPO加盟国がそれぞれの議定書に加盟しているわけではなく、2020年8月15日現在、が商標に関するバンジュール議定書に加盟しているのは、ボツワナ、エスワティニ、レソト、リベリア、マラウイ、ナミビア、サントメ・プリンシペ、タンザニア、ウガンダ、ジンバブエ、モザンビークの11カ国だ。
しかしながら、多くのARIPO/バンジュール議定書加盟国では、ARIPO登録は当該国で必ずしも法的強制力があるとは限らないことに注意する必要がある。重要な国においては国内登録の方がより確実性が高いといえる。
本文は こちら (IP protection on the African continent – ARIPO update)