先日、中国産ウナギ1200匹を国産と偽りの販売容疑で元従業員ら書類送検と報道された(20(令和2).12.2毎日新聞)。中国産のウナギを鹿児島産と偽って販売したとして、大阪府警は2日、大阪市の食品販売会社の元従業員の男性を不正競争防止法違反(虚偽表示)などの疑いで書類送検したとある。
不正競争防止法の原産地等誤認惹起行為(2条1項20号)事件である。商品又は役務の原産地や品質、内容などについて取引上誤認させるような表示をする行為、又はそのような表示をした商品の譲渡又は役務の提供などをする行為を禁止するもので、例えば、山形産でないさくらんぼに、「山形産さくらんぼ」と表示することは、産地を偽り、山形在さくらんぼ業者の利益や信用を害すると共に、山形産と思い込んで購入した消費者の利益を害することになるため、不正競争行為とされている。
不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正な目的)で、本行為をした者、また、本行為について虚偽の表示をもってした者には刑事罰が科され、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はその併科である(21条2項1、5号)。
知的財産法事件では、刑事事件は少ないが、その中で目立つのが、本事件のような不正競争防止法上の原産地等誤認惹起行為の中の産地偽装事件である。不正競争防止法事件は、行為の差止や損害賠償を求める民事事件が圧倒的であるが、産地偽装事件では、その性格からか刑事事件とされる。その直接の被害者は消費者で、当該業界や業者については間接的な被害に過ぎないからと思われる。
私の調べでは、少し前の事件として、ウナギ産地偽装事件(平成26.1.21時事通信)、コメ産地偽装事件(平成26.8.15毎日新聞)、牛肉産地偽装事件(平成26.8.15毎日新聞)、韓国産アサリを「熊本産」との産地偽装事件(平成27.2.11毎日新聞)、コメ産地偽装米穀販売元社長ら有罪判決事件(平成27.2.18毎日新聞)、羽毛産地誤表示事件(平成28.8.6朝日新聞)、ふるさと小包産地偽装米事件(平成28.9.17朝日新聞)が報道されたが、本事件は久しぶりである。産地偽装は、安易な行為と思われるが、刑事事件で有罪とされる。目先の利益の追求は高い代償を伴うことになる。消費者の目が厳しいことも忘れてはならない。