2021-02-22

EUにおける団体商標の真正な使用とは? INTAもアミカスブリーフを提出 - Novagraaf

 団体商標に関する2019年のCJEU(欧州司法裁判所)の判決を受けて、INTA(国際商標協会)はEUIPO(欧州連合知的財産庁)の拡大審判部にアミカスブリーフ(意見書)を提出し、真正な使用に関する見解を示した。Doddy Wolfsは、CJEUの判決とINTAの意見書が団体商標の所有者にとって何を意味するか解説する。

 アミカスブリーフ制度は、裁判所に対して当事者以外の第三者が事件の処理に有用な意見や資料を提出する制度で、その第三者をアミカス・キュリエ(amicus curiae:ラテン語で「法廷の友人」を意味する)という。
欧州委員会委任規則(EUTMDR)第37条(6)では、利害関係者や組織は「アミカスブリーフ」を提出することで、EUIPOの拡大審判部に付託された控訴審手続に参加することができると規定している。今回のアミカスブリーフは、EUにおける団体商標の真正な使用の要件に関するものである。

団体商標とは何か?
 団体商標とは団体が所有する商標のことで、EU理事会規則(EUTMR)第74条に定められた規定によって保護されており、EUの団体商標を「その所有者である団体の構成員の商品又はサービスと他の企業のそれとを識別することができる標章」と定義している。
 また、団体商標は普通商標の登録要件に加えて、団体商標独自の要件も満たさなければならない。これは、団体商標が指定された商品・サービスに対する真正な使用の要件を満たしていることを証明しなければならないことを意味する。しかし、団体商標の真正な使用の判断はかなり複雑であることが分かっている。
 2019年12月の「グリューネ・プンクト 対 EUIPO」の事件で、EU司法裁判所(CJEU)は、団体商標に関する真正な使用の要件について詳しく説明した。

グリューネ・プンクト 対 EUIPO
 グリューネ・プンクト (Der grüne Punkt、以下「DGP」)は、1996年に図形商標の登録を申請し1999年に登録された。DGPによると、登録申請に添付される使用を規定する規則に従い、図形商標は「包装廃棄物を回収するために包装材につけられ、この制度の資金調達に貢献し、消費者や取引業者がこの包装材を使用した商品を認識し、他の包装材や商品と区別できるようにするために作成された」ものだ。
 2012年には、指定された商品に対する図形商標の真正な使用がなされていないとして、スロバキアの企業が部分的な取消を申請した。EUIPOの取消部によると、真正な使用の証明は包装から成る商品についてのみであったため、部分的な取消を支持した。その後、DGPはこの決定を不服として上訴したが審判部で棄却され、その後EU一般裁判所からもDGPの訴えは棄却された。

 CJEUでの審理で、DGPはEU一般裁判所による「登録されている商標は商品の包装用であって、登録された商品そのものではない」との判断に対して、真正な使用の評価を誤って行ったと主張した。DGPによると、問題の商標の使用者は商品を市場に出しており、包装材の販売業者や製造業者ではないことは議論の余地がない。しかし、EUIPOは、商標が真正に使用されるためには、その商標が指定されている商品の団体商標として使用されていることが必要であるとの見解を示し、さらに、団体商標と登録された商品との関連性は、客観的かつ十分に具体的でなければならないとした。

 CJEUは判決で、団体商標に関する真正な使用の側面に光を当て、いくつかの考慮事項を示した。まず、EU商標の真正な使用に関する法の原則が団体商標にも適用されることを指摘し、さらに、EU一般裁判所が「商標によって保護されている商品やサービスの市場におけるシェアを維持または創出するために、当該経済分野においてそのような使用が正当であるとみなされるかどうか、それらの商品やサービスの性質、市場の特徴、商標の使用の規模や頻度」から真正な使用を評価すべきであったとした。
 結論として、CJEUは、EU域内において、商品自体に商標が付いていなくても、替わりに商品の特定の商標を参照していて、その団体商標に関連する当事者の商品の包装に表示されていれば、団体商標の真正な使用に当たるとした。

INTAがアミカスブリーフを提出した理由
 CJEUの判決を受けて、2020年12月に、INTAは団体商標に関する真正な使用に関する見解を示すために、アミカスブリーフを提出した。これは、今回の判決が商標法の発展にとって重要なものであると考えたためだ。 
アミカスブリーフで、INTAは以下の3つの問題についての見解を示した。 
 第一に、DGPの団体商標は消費者の選択を促進するものであり、包装された商品も真正に使用することができると主張した。DGPの団体商標により、消費者は団体商標の協会に加盟している企業が生産した商品で、その商品の包装を廃棄するための制度が提供されている商品と、そのような制度が提供されていない商品との間で選択することができる。  
 第二に、INTAによれば、使用規則により指定された商品やサービスが商標を所有する団体によって設定された特定の基準を満たすことが求められる場合、団体商標と証明商標の機能が重複する可能性があり、その結果、商標は商品またはサービスの特定の仕様を証明することになる。つまり、団体商標と証明商標は、同時に真正に使用することができることになる。
 最後に、INTAは、団体商標や証明商標によく見られるように、多種多様な商品やサービスへの使用を目的とした商標については、使用証明の基準を十分応用すべきであると指摘している。

次に起こること
 CJEUの判決では、以下の場合にEUにおいて団体商標の真正な使用となることを明らかにした。
* 団体商標の協会に加盟している当事者の指定する商品・サービスを、協会に加盟していない企業の商品・サービスと区別するために使用されている場合
* 指定された商品・サービスの創作と販売の維持(to create and preserve an outlet)を目的としている場合

 団体商標の真正な使用を評価する際には、消費者の認識を考慮に入れなければならないとCJEUは指摘している。今回の決定により、CJEUは、EUにおける団体商標の所有者に明確な優位性を与えたことになる。
特に、団体商標と証明商標の真正な使用の重複に関するコメントは考えさせられるものがあり、興味深い観察である。したがって、CJEUや他のEU組織によるこの問題のさらなる解明が期待される。今後も引き続き動向を注視していきたい。

本文は こちら (Collective marks in the EU: What constitutes genuine use?)