2021-05-06

工藤莞司の注目裁判:京都府茶協同組合の出願商標「Ujicha」を3条1項3号で拒絶した審決が支持された事例

「京都府茶協同組合」が出願した商標「Ujicha」について商標法3条1項3号に該当するとして拒絶した審決が支持された事例:令和3年3月30日 知財高裁令和2年(行ケ)第10133号)

事案の概要 
原告(出願人・審判請求人)は、「Ujicha」を標準文字で表した本願商標について、30類「京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶」等を指定商品として普通の商標登録出願した後団体商標登録出願へ変更した処、拒絶査定を受けたので、拒絶査定不服審判(不服2019-9420)を請求したが、特許庁は不成立の審決をしたので、知財高裁に対して、その取消しを求めて提訴した事案である。審決は、本願商標は商標法3条1項3号に該当し、同法3条2項の要件を具備しないとした。原告は「宇治茶」については、地域団体商標の登録(第5050328号)を受けている。

判 旨
① 本願商標の商標法3条1項3号該当性について
広辞苑第7版(証拠略、以下同じ)によれば、「宇治茶」 は、「京都府宇治地方から産出する茶。室町時代から茶道で賞美。」であるとされ、「新茶業全書」、「新・食品事典 水・飲料」といった書籍においても、「宇治茶」が、京都府宇治地方から産出する茶である旨の記載がある。また、多数のウェブサイトにおいて、本願の指定商品又は関連する商品に関して、「宇治茶」、「UJICHA」、「Ujicha」、「Uji cha」、「UJI-CHA」・・・といった文字を包装に表示したものが掲載されている。そうすると、本願商標は、その指定商品との関係において、「京都府宇治地方で製造又は販売する茶」であることを認識、理解させるにすぎず、単に 商品の産地、販売地、品質又は原材料を普通に用いられる方法で表示するものであって、商標法3条1項3号に該当する。
原告は、本件地域団体商標の存在により、商品に付された場合、原告の業務に係る商品であることを示す出所識別機能を有すると主張する。しかし、・・・域団体商標の登録を受けたからといって、当然に同法3条1項3号に該当しない(出所識別機能を有する)ことになるわけではないことは明らかである。
② 使用による識別力の獲得について
本願商標が、原告又はその構成員により使用をされた結果、需要者が原告又はその構成員の業務に係る商品であると全国的に認識されているとはいえず、本願商標は商標法3条2項の要件を具備しない。

コメント 
本件事案では、指定商品緑茶等について「Ujicha」の識別力の有無について争われ、知財高裁も、審決同様、これを否定し、また使用による識別力の獲得も認めなかったものである。原告側は、既に登録を受けた「宇治茶」に係る地域団体商標を持ち出したが、地域団体商標については、3条1項3号は不適用で(7条の2第1項柱書き)、また3条2項において要求される周知性よりは低い周知性と緩和されていて(特許庁「逐条解説」21版1535頁)、本件事案には適切ではない。本願商標は、団体商標登録出願で最近では稀有な出願と思われる。