2021年6月29日、世界貿易機関(WTO)加盟国は後発開発途上国(LDC)に与えられていた知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)の履行までの経過期間10年について、13年間延長することを承認した。今回の延長はTRIPS理事会で最終合意されたもので、新たな期限は2034年7月1日となった。
TRIPS協定は、WTO加盟国が一律に遵守することが要求される最低基準を定めた協定で、知的財産権の保護に関するパリ条約、著作権及び関連する権利の保護に関するベルヌ条約の遵守を義務づけたほか、商標、地理的表示、特許、意匠、集積回路の回路配置、営業秘密などの保護に関する規則を遵守することを定めている。
ミャンマーにとっては、4つの知的財産法(2019年に制定された)のうち、作業が始まったのは商標法1つだけで、新しく設立された知的財産局(IPD)は、2020年10月1日に「ソフトオープン期間」をスタートし、商標法に基づいて既存の商標を再登録するための申請を受け付けている。ただし、商標法の完全実施は遅れており、「グランドオープン」の時期はまだ決まっていない。商業省は、他の3つの法律の実施は商標法が施行された後になると予想している。
それまでの間、新しい商標は旧制度の所有権宣言(Declaration of Ownership)によって登録することができ、意匠、特許、著作権はコモンローと関連する既存の法律に基づいて引き続き保護される。
今回のLDCに対するTRIPS経過期間の延長は、直ちに対応を必要とするような法律や政策の変更ではないが、ミャンマーで事業を行っている企業にとっては、自社の知的財産を把握し、TRIPS協定に準拠していない可能性のある現地の法律が引き続き適用されていることを踏まえて、異なる保護戦略が必要であるかどうかを検討するための良い機会となる。
本文は こちら (Effects of the TRIPS Transition Period Extension on Myanmar)