2021-09-01

工藤莞司の注目裁判:提出証拠による使用事実が否定されて審決が取り消された事例

「美少女図鑑」不使用取消事件 令和3年7月19日 知財高裁令和3年(行ケ)第10003号

事案の概要 原告(請求人)は、本件商標の登録(第5360897号 商標「美少女図鑑(標準文字)」第41類「通信回線を利用した音声又は音楽の提供、音楽の演奏、演芸の上演、演劇の演出又は上演、通信回線を利用した画像の提供等」)について、不使用の登録取消審判(2020-30068)を請求した処、特許庁は使用を認めて不成立の審決をしたため、本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した事案である。

判 旨 甲15には、「Fのぶらり商店街」の見出しの下に、別紙記載の本件バナーを含む複数のバナーが表示されている。また、甲17は、本件ウェブページを印刷した書証であり、「美少女図鑑 作品一覧」の見出しの下に、本件バナーの画像が表示され、その画像の下には、複数の電子写真集のサムネイルが表示されている。本件バナーには、女性を被写体とする3枚の写真を背景に、白く縁取りされたピンク色の書体の「美少女図鑑」の文字からなる本件使用商標が表示されている。そして、証拠等によれば、本件ウェブページに表示された各サムネイルの横には、例えば、「女子校生 先輩は僕のいいなり A 2018-09-01」、「女子校生 純白 B 2018-09-01」等の記載があることが認められる。
 しかしながら、本件ウェブサイトの本件トップページ(甲15)及び本件バナーのリンク先の「美少女図鑑 作品一覧」の見出しがある本件ウェブページ(甲17)は、いずれも要証期間経過後の本件審判請求後に印刷されたものであるから、甲15及び17が存在するからといって、要証期間(平成29年6月18日から令和2年6月17日までの間)に、本件トップページ及び本件ウェブページに本件バナー及びその画像が表示されていたものと直ちに認めることはできない。また、平成28年頃、本件トップページ及び本件ウェブページに本件バナー及びその画像がアップロードされて掲載されたことを客観的に裏付ける証拠は存在しない。

コメント 本件事案では、不使用取消しの審判においては使用が認められたが、取消訴訟においては、使用が否定されて審決が取り消されたものである。使用の証拠として、ウェブサイト搭載ページを要証期間経過後印刷出力したため、登載内容の登載時期を客観的に証明する必要があるがその証明がないとされた。関係者の陳述書を提出しているが、その内容に矛盾があるとして採用されなかった。いずれも原告主張に沿っている。過去の搭載事実やその画像提供事実の立証資料が乏しいならば、搭載関係者や閲覧者等による証言が考えられよう。