11世紀に作られたとされるイースター島のモアイ像は世界的に有名だが、そのモアイ像をモチーフにしたちょっと変わったティッシュケースが登場するとは思ってもみなかった(とはいえ、日々革新的な製品は目に入ってくる)。
もちろん、とんでもない製品が売られていることもあるが、モアイ像のケースは、商標法の視点から見ても興味深いものだ。というのも、この製品は欧州連合(EU)において立体商標として出願されており、興味深い問題を提起している。
形状に識別力はあるか?
モアイ像の形状でティッシュケースと認識することができる人はいるのだろうか?その形状はティッシュケースにとって特徴的といえるものなのだろうか?もちろん、少なくとも注目に値する形状であることは間違いないが、一方、この形状がブランドとして、商品の出所を表す識別力のある標識として認識されるかどうかが問題となる。この形状は商標として機能するのだろうか?
形状は商品の魅力を決定づけるものか?
商標の登録には識別力以外にも様々な要件が審査される。例えば、形状が商品に実質的な価値を与えるものであってはいけない。つまり、商品の形状が非常に魅力的で、その形状だけで商品が購入されるような場合には、その標識は商標としての保護から外される。この要件は、ティッシュケースでも大きな障害になるかもしれない。
社会的に好ましくない?
また、出願の際には、1つの企業がこれを独占することが社会的に望ましいかどうかも考えなければならない。商標権は、商標権者の利益のために名前やロゴを独占することができることを意味しているが、商標権者として気をつけなければならないのは、文化遺産からインスピレーションを得ている場合、先住民族の名前やシンボルなどは避けた方が賢明だ。そうしないと、いつの間にか攻撃の的や笑いものの対象にされてしまう。例えば、ある映画プロデューサーが「Dias del Los Muertos(メキシコの伝統文化、風習であるである祝日「死者の日」)」を商標登録したところ、メキシコ全土から怒りを買うことになった。また、ディズニー映画の「ハクナ・マタタ(「心配ないさ」という意味のスワヒリ語)」という言葉を商標登録したディズニーに対しては、アフリカの伝統を奪ったと見る人もいた。
モアイ像のティッシュケースとイースター島のイメージとが一致するかどうかは議論があるだろうが、おそらくこの商標権者には、先に解決すべき問題があるように思われる。しかし、この不思議な商品が、商標法の視点から非常に興味深いものであることは間違いない。