2021年11月26日、UKIPO(イギリス知的財産庁)は、EUの商標権に基づく英国商標の異議申立てに関する実務を変更する。これは、BREXIT後に英国の商標権者にとって公平な競争環境を整えるためのもので、この変更による影響を解説する。
なぜこのような変更が行われるのか?
Brexit移行期間終了後の2021年1月、EUIPO(欧州連合知的財産庁)は英国の権利に基づくEU商標への異議申立てを却下した。
対照的に、UKIPOは2021年1月1日以前に出願された英国商標に対して、EUの商標権に基づく異議申立てを継続することを認めていた。
その結果、英国の商標権者にとっては、EUの商標権者が請求した商標出願/登録に対する異議申立てを防御するために、それ以前の英国の商標権を使用することができなくなるという不均衡が生じた。
今回の変更点は?
Brexit移行期間終了時に、2021年1月1日以前に保護されていたEUTM(欧州連合商標)の権利者に、同一の英国商標権(対応する権利:comparable right)が自動付与された。また、2021年1月1日時点でEUTM出願が係属している場合、UKIPOは出願人に対し、EUTMの出願内容と出願日を維持して、新たな英国出願(対応する権利の出願:comparable right applications)を行うことを2021年9月30日まで認めた。
異議申立が、対応する権利を申請していない係争中のEUTMに基づいている場合、手続きの停止を請求できる可能性があり、異議申立は却下される可能性がある。
どのような影響があるか?
それぞれの状況で起こる影響の詳細は、UKIPOの実務ノート(Practice Note)に記載されている。重要なのは、この実務は以下の場合にのみ適用されるということだ。
つまり、英国の異議申立/無効審判手続きが2020年12月31日の午後11時以前に開始された場合、または2020年12月31日午後11時以前に出願された英国商標に対して、2020年12月31日午後11時以降に異議申立手続が行われた場合である。
自分の商標に対する異議申立の根拠となっているEUTMから「クローン商標」として生成された相手の英国登録に異議を唱え、英国における相手側の商標の有効性が決定されるまで、自分の商標に対する異議申立手続きの停止を請求できるかもしれない。
また、異議申立が、再出願された対応する英国の権利が係属中のEUTMに基づいている場合、出願に異議を申立てたり、対応する権利の登録に無効を請求したり、相手の英国出願が公告されるまでクライアントの出願に対する係属中の異議申立手続きの停止を請求することができる可能性もある。
異議申立が、対応する権利の出願がなされていない係属中のEUTMに基づいている場合には、手続の停止を請求することができ、自分の出願に対する異議申立が却下される可能性もある。
どうしたらいいか?
この変更で影響を受けるケースは少ないものと思われるが、異議申立を防ぐために、これまでにはなかった新しい主張ができる可能性はある。特に、EUTM登録に基づいて付与された英国内の第三者の権利に対して、新たな理由(例えば、UKIPOの実務によれば、商標が記述的または一般的であるということ)で異議を唱えることできるかもしれない。
EUTM の権利に基づいていた英国の商標登録や現在係属中の出願に対してチャレンジを受けた場合、自分の立場を守るための新たな方法がないか検討する価値がある。これは、相手の商標に異議を申立てるために使用できる他の先行する権利を英国で持っている場合は特に有効だ。11月26日以降に新たな実務上の変更を利用しようとする試みは、実質的な決定が出される前に、できるだけ早く行うのがいいだろう。
本文は こちら (M&C Reacts: Our analysis of the forthcoming change to UK trademark challenges)